出題者の四つの手口 — 正しそうな誤りには型があります
ここまでの5つのユニットで、処分性の判断の軸と、代表的な判例はそろいました。残る仕事は、それを本試験の選択肢の中で使えるようにすることです。
処分性の問題は、知識を素直に聞いてはくれません。正しそうに書かれた誤りを見破れるか、を試してきます。ただし、誤りの作り方には型があります。過去問を並べると、仕掛けは4つに集約できます。
正しそうに見える誤りの肢は、どの型で作られているのでしょうか。
仕掛けの型を先に知っていれば、肢は速く読めます
4つの型は、①判例の結論を逆にする、②名前で錯覚させる、③「すべて・一切」で言い切る、④「処分性あり」を「勝訴」にすり替える、です。どれも、このシリーズで学んだ軸のどれかを裏返しただけです。
4つの型を、実物の言い回しで確認します
型① 判例の結論を逆にする
「土地区画整理事業計画の決定に処分性は認められない」。判例変更前ならそのとおりでしたが、いまは「あり」です(最大判平20.9.10)。古い結論を混ぜてくるので、判例変更のある論点は「昔はなし、いまはあり」とセットで覚えます。
型② 名前で錯覚させる
「告示は一般的規制だから処分性なし」「条例は立法だから処分性なし」。名前で一般化させる罠です。二項道路の告示も、保育所廃止条例も「あり」でした。名前が出たら、必ず「特定の人に確定的な効果があるか」に戻ります。
型③ 「すべて」「一切」で言い切る
「行政指導には一切処分性がない」。原則は「なし」ですが、病院開設中止勧告という例外があります。絶対表現を見たら、反例を1つ思い出してください。
型④ 「処分性あり」を「勝訴」にすり替える
「処分性が認められれば、その処分は取り消される」。誤りです。処分性は入口(訴訟要件)を通れるかの話で、違法かどうかの本案は、その先の別問題です。
本番で効く反射は、3つです
①絶対表現(すべて・一切・必ず)を見たら、反例を1つ思い出す。②判例変更のある論点(区画整理)は、新旧の結論をセットで思い出す。③「処分性あり=取り消される」と読める肢は、その時点で誤りと判断する。処分性は入口の話、違法かどうかは中身の話です。
「正しそうな誤りを疑う」姿勢は、実務ではそのまま誤助言の予防になります。依頼者への説明で「勧告は行政指導なので争えません」と言い切ってしまえば、病院勧告型の例外を落とすことになります。原則を答えたうえで、「ただし、従わない場合の不利益が制度に組み込まれていれば別です」と一言添えられるかどうかが、専門家としての精度です。
処分性のシリーズは、ここまでです。軸は最後まで1本、「公権力が、特定の人を名指しして、退路を断ったか」でした。勧告・告示・条例・通知・計画といった名前は、判断材料ではありません。仕上げに、この論点全体を通しのドリルで確認してください。次の論点「原告適格」では、「誰が訴えられるのか」を扱います。