公権力性で落ちる型 — 役所がからんでいても、取引は取引
役所も、ふだんの会社と同じように取引をします。備品を買い、土地を売り、建物を建てます。こうした活動は、相手との合意で成り立つ点で、民間どうしの取引と変わりません。
取消訴訟の対象になるのは、役所が「公権力」として一方的に行う行為だけです。つまり、役所がからんでいても、実質がただの取引や作業なら対象外です。試験では、この型に「役所っぽい名前」をかぶせて、釣られないかを試してきます。
役所がした行為なのに「処分ではない」とされるのは、どんな型でしょうか。
役所がからんでいても、取引は取引です
第一の要素(公権力性)を思い出してください。相手の同意で成り立つ契約や、ただの作業(事実行為)は、一方的に権利を動かす行為ではありません。
もう1つ、別の型があります。法律が「この件は別の手続で争ってください」と専用の出口を用意している場合です。このときも、取消訴訟は使えません。見ていく判例は4つ、「なし」3つと、対比のための「あり」1つです。
「なし」3つと、対比の「あり」1つです
1つ目は、ごみ焼却場の設置です。行政庁が私人と結ぶ売買契約などに基づく設置は、私法上の契約とただの作業(事実行為)であり、「公権力の行使」に当たりません(最判昭39.10.29)。処分性の考え方の出発点を示した、定義判例と呼ばれる事件です。
2つ目は、国の普通財産の払下げ(国の財産を民間に売り渡すこと)です。「払下げ」という役所らしい名前ですが、実質はただの売買契約なので、処分ではありません(最判昭35.7.12)。
3つ目は、交通反則金の納付の通告です。納付はあくまで任意で、争いたければ刑事手続という専用のルートが用意されています。取消訴訟で争わせる仕組みになっていないため、処分性は認められません(最判昭57.7.15)。
対比として、土地改良事業の施行の認可は「あり」です。認可によって、組合員の土地に対する権利変動の効果が生じるからです(最判平4.1.24。この判決の主な論点は「訴えの利益」で、認可が処分である点は前提とされています)。
「払下げ」という名前に、釣られてはいけません
「国の普通財産の払下げは、公権力の行使に当たるから処分性が認められる」という肢は誤りです。名前がどれだけ役所らしくても、実質が売買契約なら民事の世界です。
「交通反則金の通告に不服があれば、取消訴訟で争える」という肢も誤りです。救済のルートが刑事手続に別建てされている型は、取消訴訟の出番がありません。名前ではなく、公権力性と救済の仕組みで判断してください。
役所相手の仕事には、許認可のほかに「契約」の世界があります。入札への参加、業務委託、公有財産の売払いなどです。この世界でトラブルになった場合、争いの土俵は原則として民事です。依頼者の相談を受けたとき、「これは許認可の話か、契約の話か」を最初に切り分けて示せると、その後の手続の説明が一本の筋になります。
冒頭の問いに戻ります。役所の行為でも、実質が取引や作業なら処分ではありません。専用の救済ルートが別にあるものも、取消訴訟では争えません。これで「入口で落ちる型」は一通り見ました。最後のユニットでは、出題者がこれらをどう組み合わせて仕掛けてくるかを、本試験の形式で総仕上げします。