通知と通達 — そっくりな言葉が正反対になる理由
会社の文書には、宛先がおおまかに2種類あります。社内に向けたもの(業務マニュアルなど)と、社外の相手に届くもの(契約の解約通知など)です。社内マニュアルがどれだけ変わっても、顧客の契約は動きません。しかし解約通知が顧客に届けば、その瞬間から契約は現実に動きます。
役所の世界にも、これとよく似た区別があります。「通達」と「通知」です。言葉はそっくりですが、裁判で争えるかどうかという場面では、正反対の扱いを受けることがあります。
同じ「お知らせ」に見える通達と通知は、何が違うから結論が分かれるのでしょうか。
宛先が内側か外側かで、効果がまるで違います
会社の例がそのまま使えます。通達は、上級の役所から下級の役所への内部文書で、社内マニュアルにあたります。国民に向けた文書ではないので、国民の権利や義務は動きません。
一方、国民本人に届いて「この先に進む道はありません」と確定させる文書は、解約通知にあたります。表題が「お知らせ」でも「通知」でも、権利は現実に動いています。見ていく判例は5つ、「あり」4つと「なし」1つです。
「あり」が4つ、「なし」が1つです
まず「あり」の4つです。輸入しようとした貨物について、税関から「禁制品に当たる」という通知が届くと、その貨物は適法に輸入できなくなります。通知という名前でも、輸入の道を確定的に断つ法的効果があるため、処分性が認められました(最判昭54.12.25)。輸入食品についての食品衛生法違反の通知も同じ型です(最判平16.4.26)。
払いすぎた登録免許税の還付(返してもらうこと)を求めたのに対する、登記官の拒否通知も「あり」です。拒否の通知によって、還付を受ける道が断たれるからです。申請に対する拒否の応答は、処分になりやすい型です(最判平17.4.14)。労災の遺族への就学援護費を支給しない決定も「あり」です。恩恵的な給付に見えますが、法を根拠とする優越的な地位に基づいて一方的に行われる決定であり、受給者の権利に直接影響するためです(最判平15.9.4)。
「なし」の1つが通達です。墓地埋葬法の解釈を示す通達は、上級庁から下級庁への内部の命令であり、国民に対する外部的な法効果を持ちません(最判昭43.12.24)。
「恩恵的だから処分ではない」も、ひっかけです
1つ目の罠は、通知と通達の取り違えです。「通達は国民に外部的効果を及ぼすから処分性がある」という肢は誤りで、通達は内部限りです。外に届いて退路を断つのは「通知」の側です。
2つ目の罠は、給付の性質による言い切りです。「恩恵的な給付だから処分ではない」とは限りません。見るべきは性質のラベルではなく、法に基づく一方的な決定として、受ける側の権利に直接影響するかどうかです(就学援護費)。
依頼者のもとに届く役所の文書には、「◯◯のお知らせ」「◯◯について(通知)」といった表題が並びます。実務でまず確認するのは、その文書で依頼者の法的な扱いが確定したのかどうか、そして文末に不服申立ての案内(教示)が付いているかどうかです。教示があれば、役所自身がそれを処分と扱っている強いサインです。ただし、教示がなくても処分性が認められる場合はあります。表題ではなく効果で読む習慣が、そのまま試験の得点にもつながります。
冒頭の区別に戻ります。社内マニュアルにあたる通達は国民の権利を動かさず、相手に届く解約通知にあたる通知は動かします。役所の文書も、宛先と効果で読めば結論はぶれません。次のユニットでは、そもそも「公権力の行為」といえないために入口で退けられる型を見ます。