出題者の四つの手口 — 原告適格は「一般化」で引っかけてきます
ここまでの4ユニットで、条文(9条1項・2項)と判例8つがそろいました。仕上げは、本試験の選択肢の中でこれを使う練習です。
原告適格の誤りの肢は、ほとんどが「正しそうな一般化」でできています。個別の判例の結論を、判例が言っていない範囲まで広げる手口です。型は4つあります。
原告適格の「正しそうな誤り」は、どの型で作られているのでしょうか。
4つの型は、すべて「広げすぎ」か「狭めすぎ」です
①「反射的利益にすぎない」と狭めすぎる、②「文言のみで判断」と9条2項改正前に戻す、③「第三者は一切ダメ」と狭めすぎる、④「周辺住民なら常にあり」と広げすぎる。どの肢も、利益の質と法令の仕組みという軸に戻せば崩せます。
4つの型を、実物の言い回しで確認します
型① 「反射的利益」へのすり替え
「周辺住民の利益は反射的利益にすぎない」。一般論めいていますが、生命・身体の安全や健康被害に関わるなら個別保護が認められます(もんじゅ・小田急)。「反射的利益」と断定する肢を見たら、利益の質を確認します。
型② 9条2項を無かったことにする
「原告適格は根拠法令の文言のみで判断する」。改正前の狭い運用のイメージです。いまは法令の趣旨目的・関係法令・利益の内容性質・害される態様程度まで見ます。
型③ 「第三者は一切訴えられない」
9条2項は、まさに第三者の原告適格を判断するために置かれた規定です。「相手方に限られる」「一切ない」という肢は、条文の存在自体と矛盾します。
型④ 判例の射程の広げすぎ
「周辺住民であれば常に原告適格がある」。もんじゅや小田急の結論を、あらゆる施設に広げる手口です。サテライト大阪の周辺住民は否定されました。結論だけでなく「なぜ認められたか・なぜ否定されたか」の理由をセットで覚えます。
本番で効く反射は、3つです
①絶対表現(一切・常に・必ず・いかなる場合にも)を見たら、反例を1つ思い出す。②「反射的利益」「文言のみ」という言葉を見たら、利益の質と9条2項の四要素に戻る。③「原告適格があれば違法性が認められる」と読める肢は、その時点で誤りです。入口と中身は別の話です。
この「一般化を疑う」姿勢は、実務の助言でも同じ形で効きます。「住民の方は無理ですよ」と言い切れば、もんじゅ・小田急型を落とします。「住民ならいけますよ」と言えば、サテライト大阪型で外します。原則と例外を対で示し、決め手は法令がその人を個別に守っているかどうかだと伝える。専門家の説明は、判例の構造と同じ形になります。
原告適格のシリーズは、ここまでです。軸は最初から最後まで「法律は、その人個人を守っているか」の1本でした。相手方は当然に通り、第三者は9条2項の四要素で、利益の質と法令の仕組みを見ます。仕上げに、この論点を通しのドリルで確認してください。次の論点「訴えの利益」では、時間の経過とともに争う資格が消えることがある、という問題を扱います。