競業者と消費者 — 商売敵は争えて、お客は争えません
新しい業者に許可が出ると、割を食うかもしれない人が2種類います。同業のライバルと、サービスの質が下がった場合の消費者です。直感的には、守られるべきなのは消費者の方に思えます。
ところが判例の結論は逆でした。ライバル業者には原告適格が認められる場合があり、消費者には認められませんでした。この逆転に、原告適格の考え方がよく表れています。
ライバル業者と消費者、法律が「個別に」守っているのはどちらでしょうか。
法律が「あなたの商売」を守る仕組みを持つときだけ、資格が認められます
業種によっては、許可の数や区域を絞る規制があります。数を絞るということは、既存業者の経営が過当競争で崩れないように、制度が業者の営業を守っているということです。この場合、既存業者の営業上の利益は、制度が個別に守っている利益だと読めます。
一方、消費者の利益は、規制がうまく働いた結果としてみんなに行き渡る恩恵です。前に見たガードレール型、つまり反射的利益と読まれやすいのです。見ていく判例は3つです。
守られる商売、守られないお客と研究者です
まず競業者です。一般廃棄物収集運搬業の許可について、既存の許可業者が新規許可を争った事件で、判例は廃棄物処理法が既存業者の事業上の利益を個別的に保護する趣旨を含むとして、原告適格を認めました(最判平26.1.28)。
次に消費者です。ジュースの不当表示をめぐって消費者団体が争った主婦連ジュース事件では、消費者の利益は不特定多数が共通して持つ抽象的・平均的・一般的な利益にすぎないとされました(最判昭53.3.14)。法律上保護された利益説の原点として引かれる判断です(この事件で直接争われたのは審決への不服申立ての適格ですが、判断の基準は原告適格と共通です)。
もう1つ、利益の「個別性」が否定された例として、史跡指定の解除を学術研究者が争った伊場遺跡事件があります。研究者の学術研究上の利益は、一般的・抽象的な利益にとどまるとされました(最判平元.6.20)。熱意や専門性の高さは、個別保護の根拠にはなりません。
「いかなる場合にも」と「当然にある」の両方を疑ってください
「競業者はいかなる場合にも原告適格を有しない」は誤りです。一般廃棄物の判例が反例です。逆に「競業者なら当然にある」も誤りで、法令が営業上の利益を個別に保護する仕組み(需給調整など)を持つかどうかで決まります。
消費者側も同じです。「消費者の利益は法律が個別的に保護するものだから原告適格がある」という肢は、主婦連ジュース事件の結論と正反対です。
同業者から「新しい許可が出そうだが、何かできないか」という相談を受けたら、最初に見るのは根拠法令に需給調整や距離制限のような、既存業者を守る仕組みがあるかどうかです。それがあるなら争う土俵がありえますし、なければ営業努力の話として整理するのが誠実です。感情の強さではなく、法令の仕組みで答えが決まることを、依頼者に最初に伝えます。
冒頭の問いに戻ります。法律が個別に守っているのは、意外にも消費者ではなく、制度が営業を守る仕組みを持つ場合の競業者でした。個別保護は「命・健康」だけでなく「制度が守る商売」にも及びます。次のユニットは総仕上げ、出題者の手口を本試験形式で見破ります。