9条2項の四要素 — 第三者の資格は、2004年に広がりました
前のユニットで、第三者の原告適格は「法律がその人個人を守っているか」で決まる、というところまで来ました。では、それを誰が、どう判定するのでしょうか。
長いあいだ、この判定は判例任せで、第三者の原告適格は狭く判断されがちでした。2004年、国会は行政事件訴訟法を改正し、判定のときに考慮すべき要素を条文そのものに書き込みました。それが9条2項です。裁判所の読み方に、法律が注文を付けたわけです。
第三者の原告適格は、何をどう考慮して判断するのでしょうか。
四要素は「法律を広く読み、被害を具体的に見る」の言い換えです
覚える要素は4つですが、中身は2つの方向にまとめられます。1つは法律の側を広く読むこと。その規制は何のためか(根拠法令の趣旨・目的)、同じ目的を持つ仲間の法令はないか(関係法令)。もう1つは被害の側を具体的に見ること。何が害されるのか(利益の内容・性質)、どのように、どの程度か(態様・程度)。
条文の順番どおりに、4つを固定して覚えます
9条2項が働くのは、処分の相手方以外の者、つまり第三者の原告適格を判断するときだけです。考慮要素は次の4つで、順番ごと固定して覚えます。
1根拠法令の趣旨及び目的
処分の根拠法令は、何のために規制を置いているのか。社会全体のためだけか、特定の人の利益も守ろうとしているのか。
2関係法令の趣旨及び目的
根拠法令と目的を共通にする別の法令があれば、その趣旨・目的も参酌します。個別の条文だけでなく、法体系全体で見ます。
3利益の内容及び性質
害されるおそれのある利益は何か。生命・身体の安全か、生活環境の快適さか。利益の質が高いほど、個別保護が認められやすくなります。
4害される態様及び程度
処分が違法だった場合、その利益はどのように、どの程度害されるのか。直接的・重大・回復困難であるほど、個別保護に傾きます。
この四要素を実際に使ってみせたのが、小田急線高架訴訟です。最高裁大法廷は、都市計画法の趣旨に加えて、公害対策基本法や東京都環境影響評価条例等まで参酌し、沿線住民の騒音等による健康被害の防止という利益が個別的に保護されているとして、原告適格を認めました(最大判平17.12.7)。
「文言のみで判断する」という肢は、改正を無視しています
「原告適格は根拠法令の文言のみによって判断すべきである」という肢は誤りです。それは改正前の狭い運用のイメージで、9条2項はまさにそれを改めるために作られました。「文言のみ」「規定のみ」という言葉を見たら、四要素を思い出してください。
もう1つ、四要素に「ないもの」を混ぜる肢も出ます。「相手方の経済的損失の程度」「利益の経済的価値」は、9条2項には挙げられていません。
第三者の立場から役所に働きかける文書(意見書や不服申立てなど)を組み立てるとき、この四要素はそのまま主張の目次になります。根拠法令だけでなく関係法令まで拾って趣旨を語り、被害は抽象的な「環境悪化」ではなく具体的な内容・程度で書く。判例の作法が、そのまま書面の作法です。
冒頭の問いに戻ります。第三者の原告適格は、9条2項の四要素——法律を広く読み、被害を具体的に見る——で判断します。道具はそろいました。次のユニットでは、この道具が実際の判例でどう働いたかを、いちばん出題される「周辺住民」で確かめます。