事例III(生産・技術)— 問題点はQCD、原因は4Mで切り分けます
事例III(生産・技術)の与件文は、納期遅延、品質不良、在庫過多、設備停止など、工場や現場で起きる困りごとが並びます。困りごとの種類は多様に見えても、整理する物差しは限られています。
事例IIIの答案は、この物差し——QCDと4M——を軸に組み立てると、迷いなく骨子が立ちます。
事例III(生産・技術)では、与件文の問題点をどんな物差しで整理し、どんな順序で施策を提案するのが定石なのでしょうか。
QCDで問題点を分類し、4Mで原因を切り分けます
事例IIIの問題点は、まずQCD——Quality(品質)・Cost(コスト)・Delivery(納期)のどこに位置するかで分類します。「納期遅延」ならD、「不良品の流出」ならQ、「外注依存によるコスト増」ならCという具合です。分類できたら、原因を4M——Man(人)・Machine(設備)・Material(材料)・Method(方法)——のどこにあるかで切り分けます。「作業標準が未整備で熟練作業者への依存度が高い」ならMan・Methodの問題、というように与件文の記述をこの軸に当てはめます。
生産形態の把握も出発点です——受注生産(BTO)か見込生産(MTS)か、多品種少量か少品種多量か、セル生産・ライン生産・ジョブショップのどれに近いか。与件文の企業がどの形態かによって、有効な施策の種類が変わります。
典型課題には対応する施策があり、現場改善→システム化→設備投資の順が原則です
典型課題と施策の対応は型として整理できます——納期遅延には工程可視化・生産スケジューラ、品質不良にはQC工程表・検査強化・4M分析、在庫過多には需要予測精度向上・かんばん方式、原価高騰には外注見直し・内製化、設備停止には予防保全・TPMが対応します。QCDそれぞれの改善フレームワークも決まっています——Q(品質)はQC7つ道具(パレート図・特性要因図・管理図等)とSDCA(標準設定→実施→検査→フィードバック)、D(納期)はクリティカルパス分析・SMED(段取替え時間短縮)・TOC(制約条件理論)、C(コスト)は標準原価管理と内製・外注の判断です。
施策を提案する順序にも原則があります——現場改善→システム化→設備投資の順です。まず多能工化や標準化・マニュアル化といった現場の工夫で対応できないかを検討し、それでも足りない部分にIoT・MESといった情報システムを充て、最後に大規模な設備投資を検討する、という優先順位です。頻出フレーズにも型があります——問題点指摘は「生産工程の一部にボトルネックが発生しており全体の納期に影響している」「外注依存度が高く品質管理が不十分なため不良品の流出リスクがある」、改善提案は「生産スケジューラを導入し工程ごとの負荷を可視化・平準化する」「多能工化教育を実施し工程間の応援体制を整備する」です。
設備投資への偏りと、QCDのバランスの崩れが的です
定番の落とし穴は施策が「大規模設備投資」に偏ることです。現場改善・システム化で対応できる余地を検討せず、いきなり設備投資を提案すると、費用対効果の説明が薄い答案になりがちです。現場改善→システム化→設備投資という優先順位を、答案の中でも意識して示すことが重要です。
もう一つの的はQCDのバランスが崩れることです。品質改善だけを厚く書いて納期・コストへの目配りがない答案は、多面的な記述を求める設問では部分点にとどまりやすいとされます。事例IIIの一貫性チェックでは、第1問で指摘した問題点が施策提案で解消されているか、施策が「大規模設備投資」に偏っていないか、QCDのバランスが取れているかの3点を確認します。
診断士として事例IIIの答案を書くとき、あなたは工場全体の生産性を一つの視点で診断しています。品質の話をしていたはずが、納期やコストへの影響に触れないまま終わっていないか——答案を書き終えたら、QCDの3文字を順に指で辿り、抜けている観点がないかを確認する。これが、一面的深掘りと事例間矛盾を同時に防ぐ、事例IIIならではの見直し方です。
冒頭の問いに答えます。事例IIIは問題点をQCD(品質・コスト・納期)で分類し、原因を4M(Man・Machine・Material・Method)で切り分け、現場改善→システム化→設備投資の順で施策を提案します。次は、事例IV(財務・会計)——経営分析の型と、頻出論点の地図へ。