事例II(マーケティング・流通)— 大企業と同じことをしない、が出発点です
事例II(マーケティング・流通)の与件文には、地域密着の小売店、観光地の土産物店、B2Bから直販へ転換したい食品メーカーなど、業種は様々でも共通する一言があります——「大企業と同じ土俵では戦えない」ということです。
価格競争、大量広告、全国展開、標準化——大企業の得意な戦い方をそのまま真似れば、中小企業は消耗するだけです。事例IIの解答は、この裏返しから組み立てます。
事例II(マーケティング・流通)では、誰をターゲットにし、どんな型で施策を組み立てるのが定石なのでしょうか。
STPでターゲットを絞り、4Pで施策を組み立てます
事例IIの骨格はSTP分析です——セグメンテーション(地理的・人口統計的・心理的・行動的な変数で市場を分ける)→ターゲティング(中小企業では特定の層に絞る集中型が最も現実的とされ、幅広く狙う無差別型は非推奨)→ポジショニング(2軸のマップで競合が手薄な空白地帯を探す)という順です。
ターゲットが決まったら、4Pで具体的な施策に落とし込みます——Product(製品のコアベネフィット・実体製品・付随機能の3層で考える)、Price(スキミング・浸透・プレミアム・バンドル等の価格設定)、Place(直販・卸経由・EC・オムニチャネルのどれを選ぶか)、Promotion(SNS・コンテンツマーケティング・メールやLINE公式・口コミ・イベント体験)です。
解法フレームワークとCRM・ブランド戦略で、施策に厚みを持たせます
事例IIの解法フレームワークは5段階です——Step1与件文からターゲット顧客を特定、Step2自社の強み(差別化要因)を抽出、Step3STPで戦略の方向性を設定、Step44Pで具体的施策を提案、Step5顧客との長期的関係(CRM・ロイヤルティ向上)を加える、という順です。
頻出フレーズにも型があります——ターゲット設定は「〇〇(属性)で〇〇(ニーズ・課題)を持つ顧客層をターゲットとし」「既存顧客の深耕(ロイヤルカスタマー化)を優先し」、差別化は「価格競争に陥らず〇〇という付加価値で差別化する」、プロモーションは「InstagramやLINEを活用し視覚的な訴求と継続的なコミュニケーションを実現する」「口コミ紹介制度を設け既存顧客の紹介による低コストな新規顧客獲得を図る」です。長期的関係づくりには会員制度(FSP)とRFM分析(購買の新近性・頻度・金額で顧客をセグメント分類する手法)が使われ、顧客生涯価値(LTV)の最大化が施策の目的として結ばれます。
値下げ提案と、STPと4Pの断絶が的です
定番の落とし穴は値下げ提案です。中小企業が価格競争に踏み込む提案は、2次試験ではほぼNGとされます——「大企業と同じことをしない」という事例IIの前提そのものに反するからです。価格で対抗するのではなく、差別化された付加価値で対抗する、という方向性を崩さないことが重要です。
もう一つの的はSTPで決めたターゲットが4Pの施策に反映されないことです。設問1で「〇〇という顧客層をターゲットとする」と結論づけたのに、設問2以降のPromotionやPlaceの提案がそのターゲット像とずれていれば、事例II特有の一貫性の崩れです。事例IIの一貫性チェックでは、ターゲット顧客が全設問で統一されているか、STPの結果が4Pに反映されているか、値下げ提案をしていないかの3点を必ず確認します。
診断士として事例IIの答案を書くとき、あなたは「この会社は誰に何を売るべきか」という一つの結論を、設問をまたいで貫いています。設問1でターゲットを定めたら、設問2以降のProduct・Price・Place・Promotionの提案すべてがそのターゲットに向いているかを、答案を書き終えたあとに指で辿って確認する——これが事例間矛盾を防ぐ、事例IIならではの見直し方です。
冒頭の問いに答えます。事例IIはSTP(セグメンテーション→ターゲティング→ポジショニング)でターゲットを絞り、4P(Product・Price・Place・Promotion)で施策を組み立て、CRM・LTVで長期的関係に結びます。大企業と同じ土俵(価格競争・大量広告・全国展開・標準化)に立たないことが前提です。次は、事例III(生産・技術)——QCDと4Mで問題点を整理する型へ。