事例I(組織・人事)— 問題点は、HRM5要素の2〜3個に絞ります
事例I(組織・人事)の与件文には、驚くほど共通した悩みが並びます。属人的な意思決定、後継者と古参幹部の軋轢、評価制度の不備、技術やノウハウの継承——業種も規模も違う企業なのに、出てくる課題の骨格はよく似ています。
骨格が似ているということは、解答の型も先に準備できるということです。事例Iで何を軸に問題点を整理し、どの言葉で施策を提案すればよいのか、その型を押さえます。
事例I(組織・人事)では、与件文の問題点をどんな軸で整理し、どんな言葉で人事施策を組み立てるのが定石なのでしょうか。
HRMの5要素のうち、設問が問うている2〜3個に絞ります
事例Iの土台はHRMの5要素——採用・配置・評価・報酬・能力開発です。ただし毎回5要素すべてを書く必要はなく、設問の方向性に合った2〜3要素に絞るのが定石とされます。「モチベーションが低下している」という与件文なら評価・報酬、「技術伝承ができていない」なら配置・能力開発、というように課題と要素を対応させます。
組織の形についても型があります。機能別組織(専門性重視・単一事業向け)、事業部制(独立採算・多角化向け)、マトリックス組織(機能と事業の二軸)、フラット組織(意思決定が速く中小企業向き)、カンパニー制(分社的独立性)——与件文の企業がどの形に近く、どこへ向かおうとしているかを見極めます。組織形態やリーダーシップ・動機づけ理論の中身そのものは、別ユニットで詳しく扱います。
Step1〜5の解法フレームワークで、強みの抽出から効果の言語化まで組み立てます
事例Iの解法フレームワークは5段階とされます——Step1与件文から企業の歴史と現在の強みを抽出、Step2問題点・課題をHRM5要素または組織構造の観点で整理、Step3あるべき組織・人事の姿を設定、Step4具体的施策を採用・配置・評価・報酬・能力開発の中から提案、Step5効果をモチベーション向上・技術伝承・一体感醸成等で説明します。
問題点の指摘には型があります——「属人的な業務運営により〇〇が属人化している」「権限が集中しており意思決定が遅延している」「評価基準が不明確なため従業員のモチベーションが低下している」「技術伝承の仕組みが未整備のため熟練技術者の退職により技術流出のリスクがある」。施策提案にも型があります——「目標管理制度(MBO)を導入し個人目標と組織目標を連動させる」「OJTを体系化しメンター制度を導入することで若手の早期戦力化を図る」「権限委譲を進めフラットな組織構造に移行することで意思決定スピードを高める」。効果は「貢献が可視化され内発的動機づけが高まる」「組織全体の一体感が醸成される」「技術の組織知化が進み競争優位性が維持される」という言葉で締めます。
5要素を全部書こうとすること、手法名だけ書いて与件文と繋がらないことが的です
定番の落とし穴はHRM5要素を毎回すべて書こうとすることです。配点に見合わない字数で5要素を薄く並べると、一つひとつの施策が具体性を欠き、与件文の言葉とも結びつきません。設問の方向性に合った2〜3要素に絞り、残りは削る勇気が必要です。
もう一つの的は組織形態やリーダーシップ理論の名前だけを書いて中身が与件文とつながらないことです。「マトリックス組織へ移行すべきである」とだけ書いても、与件文のどの記述が根拠かを示さなければ、知識ひけらかしの疑いを招きます。事例Iの一貫性チェックでは、前半の設問で指摘した組織の問題点が、後半の設問の施策で解決されているか、第2問で確認した強みが施策提案で活用されているか、人事施策(採用・配置・評価・報酬・能力開発)の方向性が全設問を通じて一貫しているかを確認します。
診断士として事例Iの答案を書くとき、あなたは一人の社長に対して一貫した診断を下しています。第1問で「評価制度の不備」を問題点として指摘したなら、第3問・第4問の施策は必ずその不備を解消する方向を向いていなければなりません。設問ごとに答案を独立させて書くのではなく、「この会社の人事課題はこう繋がっている」という一本の診断書として事例I全体を読み返す——それが、やってはいけない解答パターンの一つ「事例間矛盾」を自分で防ぐ最後の手立てです。
冒頭の問いに答えます。事例Iは与件文の問題点をHRM5要素(採用・配置・評価・報酬・能力開発)のうち設問の方向性に合った2〜3個に絞って整理し、Step1〜5のフレームワークで強みの抽出から効果の言語化まで組み立てます。組織形態やリーダーシップ理論の名前は、与件文の言葉と結びついて初めて得点になります。次は、事例II(マーケティング・流通)——ターゲットの絞り方と4Pの型へ。