マズロー — 満たされた欲求は、もう人を動かしません
ある大学生の1年を追います。春、仕送りが途絶えて「今日の飯」が最優先。バイトが決まると次は「家賃を払い続けられるか」。生活が安定すると「友達が欲しい」。サークルに馴染むと「頼りになると言われたい」。そして最後に「自分にしかできないことをしたい」。
欲求には順番がある——マズローの欲求5段階説です。家賃の不安がある人に自己実現を説いても響かない理由が、この階層で説明できます。
人の欲求はどんな階層をなし、満たされた欲求はどうなるのでしょうか。
生理的→安全→社会的→承認→自己実現の5段です
下から生理的欲求(食べる・眠る)→安全欲求(住まいと暮らしの安定)→社会的欲求(所属と仲間)→承認欲求(認められたい)→自己実現欲求(自分の可能性を発揮したい)。
核心は「低い段が満たされると、次の段が動機づけとして働き始める」という順序の論理です。裏返せば、すでに満たされた欲求は人を動かす力を失う——満腹の人に食事で釣っても動かないのです。
階層の順序と、2要因理論との「構造の違い」を固めます
試験で問われるのは第一に5段の順序——社会的(所属)と承認の入れ替え、安全と社会的の入れ替えが典型です。第二に理論の構造の区別——マズローは欲求を下から積み上がる階層として描きましたが、次のユニットのハーズバーグは満足の要因と不満の要因を別系統の2分類として描きます。階層か、2分類か——構造ごと覚えると、すり替え肢に強くなります。
なお、アルダーファは5段階を存在(E)・関係(R)・成長(G)の3つに再編したERG理論を示しました——マズローと違い、複数の欲求が同時に働きうる点が対比されます。
「マズローの2要因理論」——提唱者×構造のすり替えが最頻出です
最頻出は提唱者のすり替え——「マズローの2要因理論」「ハーズバーグの欲求5段階説」はどちらも誤り。階層のマズロー・2要因のハーズバーグで固定してください。
階層の中身では「満たされた欲求ほど強い動機づけになる」が誤りの定番——逆です。満たされた欲求は動機づけの力を失い、次の段の欲求が前に出てきます。
従業員の定着に悩む会社の問診に、5段階は実用的な物差しです。給与と雇用の安定(安全)が揺らいでいる職場で「やりがい」を語っても空回りする。逆に、待遇は業界水準なのに辞めていく職場は、所属感や承認の段が欠けていることが多い——「いまどの段が欠けていますか」という順番の見立てが、施策の優先順位を決めます。
冒頭の問いに答えます。欲求は生理的→安全→社会的→承認→自己実現の5段をなし、低次が満たされると次の段が動機づけとして働き、満たされた欲求は人を動かす力を失います。では「給料を上げればやる気が出る」は正しいのか——ハーズバーグの2要因理論が、この直感に切り込みます。