ハーズバーグ — 給料を上げても、不満が減るだけです
バイトの時給が相場よりずっと低ければ、不満が募ります。では時給を上げれば「やる気満々」になるでしょうか——実感としては、不満が消えるだけで、仕事への情熱が湧くわけではない。むしろ先輩の「お前がいると店が回る」の一言の方が、やる気に火をつけたりします。
不満を消すものと、やる気を生むものは別系統——ハーズバーグの2要因理論です。この「給与はどちらか」が、試験最頻出のひっかけになります。
職務への満足を生む要因と、不満を生む要因は、同じものなのでしょうか。
不満を防ぐ「衛生要因」と、満足を生む「動機づけ要因」は別系統です
ハーズバーグは調査から、満足を生む要因と不満を生む要因が別物であることを見出しました。動機づけ要因——達成・承認・仕事そのもの・責任・成長。満たされると満足とやる気が高まります。衛生要因——会社の方針・監督のやり方・給与・対人関係・労働条件。不十分だと不満が募りますが、十分にしても「不満がない」状態止まりで、積極的な満足は生みません。
だから「給料を上げてもやる気は上がらない」——不満の火消し(衛生)と、やる気の点火(動機づけ)は、別の道具なのです。
「満足の反対は不満」ではない——2本の軸で捉えます
この理論の骨格は、満足と不満を1本の軸の両端ではなく、2本の独立した軸で捉える点にあります。満足の反対は「満足がない」、不満の反対は「不満がない」——衛生要因をいくら整えても軸を乗り換えることはできず、満足を生むには動機づけ要因(職務充実)に手を入れるしかありません。
要因の仕分けも問われます——達成感・承認・仕事そのもの・責任・成長=動機づけ/会社方針・監督・給与・対人関係・労働条件=衛生。「対人関係」を動機づけ側に置く肢、「責任」を衛生側に置く肢が典型です。
「給与は動機づけ要因である」——最頻出の一文です
この科目で最も繰り返し出る誤り肢が「給与は動機づけ要因である」です。直感には反しますが、ハーズバーグの枠組みでは給与は衛生要因——不足すれば不満を生むが、増額しても積極的な満足・やる気は生まない側です。
提唱者のすり替え(「マズローの2要因理論」)、構造のすり替え(「動機づけ要因が満たされないと不満が生じる」——不満を生むのは衛生要因の不足)にも注意してください。
「賃上げしたのに離職が止まらない」という相談は、2要因理論の実地問題です。賃金は衛生要因——不満の火消しにはなっても、定着の決め手にはならない。効くのは「任される範囲が広がる」「成長が見える」「成果が認められる」という動機づけ側の設計です。賃上げ余力の乏しい中小企業にとって、この理論は「お金以外に打てる手がある」という根拠になります。
冒頭の問いに答えます。満足を生む要因(達成・承認・仕事そのもの・責任・成長=動機づけ要因)と不満を生む要因(会社方針・監督・給与・対人関係・労働条件=衛生要因)は別系統で、給与は衛生要因——増やしても不満が減るだけです。では、やる気の強さそのものは何で決まるか——期待理論が掛け算で答えます。