出題者の四つの手口 — 「もう遅い」の一般化を疑います
ここまでの3ユニットで、括弧書きの二段構えと判例6つがそろいました。仕上げは本試験形式です。
訴えの利益の誤りの肢は、ほとんどが「事情が変わったら自動的に利益消滅」という過度の一般化でできています。型は4つです。
「もう遅い」と見せかける誤りの肢は、どの型で作られているのでしょうか。
4つの型は、すべて「自動消滅」の思い込みを突いてきます
①「工事が終われば常に消える」、②「原状回復不可能なら消える」、③「効果がなくなれば括弧書きに関係なく消える」、④「なし=処分は適法だった」。どれも、二段構えの判断を省略させようとする肢です。
4つの型を、実物の言い回しで確認します
型① 「工事が終われば常に訴えの利益なし」
建築確認・開発許可の結論を全処分に広げる手口です。土地改良事業は工事完了後も、後続の換地処分等の法的基盤として訴えの利益が残ります。「常に」が付いたら土地改良を思い出します。
型② 「原状回復不可能=訴えの利益なし」
元に戻せないことは、事情判決(行訴法31条)で扱う本案の問題です。訴えの利益を消す理由にはなりません。この切り分け自体が出題されます。
型③ 括弧書きの無視
「処分の効果がなくなれば訴えの利益はない」。9条1項括弧書きは、効果消滅後でも回復すべき法律上の利益があれば訴えられると定めています。条文の存在と正面から矛盾する肢です。
型④ 「却下」と「棄却」のすり替え
「訴えの利益を欠く訴えは、本案審理の結果として棄却される」。誤りです。訴訟要件を欠く訴えは、本案に入らず却下されます。訴訟要件すべてに共通する鉄則です。
本番で効く反射は、3つです
①「常に・いかなる場合にも」を見たら、土地改良(工事完了でも あり)と括弧書きを思い出す。②「原状回復不可能」を見たら、事情判決の論点だと切り分ける。③「棄却」と書いてある訴訟要件の肢は、その場で誤りと判断する(正しくは却下)。
「もう遅いですよ」と言い切る助言は、土地改良型(後続手続の土台が残る処分)を見落とします。「まだいけますよ」と言い切れば、建築確認型(役目を終えた処分)で空振りします。原則と例外を対にして、処分が制度の中でまだ何かの土台になっていないかを確認してから答える。ここでも、専門家の説明の形は判例の構造と同じです。
訴えの利益の論点は、ここまでです。これで取消訴訟の訴訟要件が3つそろいました。処分性は「何を争えるか」、原告適格は「誰が争えるか」、訴えの利益は「いつまで争えるか」。どれも入口の審査であり、通れることと勝てることは常に別の話でした。仕上げに、3論点を通しのドリルで確認してください。