NPV法 — 儲け話は「今のお金」に直してから判定します
知人からこんな話を持ちかけられたとしましょう。「100万円出資してくれれば、毎年30万円ずつ、5年間返す」。受け取る総額は150万円で、50万円の得に見えます。
この「50万円の得」が幻かどうかを、前の2ユニットの道具で確かめられます。使う式は1本、判断基準は1行です。
この投資は得か損か——将来の回収と今の支出を、どうやって1つの数字で判定するのでしょうか。
将来の回収を全部「今のお金」に直してから、出ていくお金と引き算します
毎年30万円×5年の回収は、今のお金ではありません。割引率10%なら、年金現価係数3.791を使って一発です。30万円×3.791=113.73万円。これが回収の「今の値段」です。
出ていく100万円は今日のお金なので、そのまま引き算できます。113.73万円−100万円=+13.73万円。単純合計の「50万円の得」は幻でしたが、今のお金に直しても13.73万円のプラスは残りました。この差額をNPV(正味現在価値)と呼びます。
式は1本、判断基準は1行です
判断基準はこうです。NPV>0なら投資を実行、NPV<0なら見送り、NPV=0なら無差別。複数の案から1つだけ選ぶ(相互排他的な)場合は、NPVが最大の案を選びます。
NPVの単位が「円」であることに意味があります。NPVは利回りでも効率でもなく、この投資で会社の価値が今のお金でいくら増えるかそのものです。だからプラスの案を実行するほど、会社の価値は積み上がります。
計算の実際は、毎年のCFが同額なら年金現価係数(前ユニット)、バラバラなら年ごとに現価係数を掛けて足し合わせます。どちらのルートでも、最後の引き算は同じです。
単純合計との比較、それが出題者の用意した入口です
最頻出の誤り筋は、割引かずに単純合計で判断する選択肢です。冒頭の例なら「総額150万円>投資100万円だから50万円の得」。割引率が高い問題ほど、この幻の得は大きく削られます。
もう1つは初期投資の引き忘れです。現在価値合計の113.73万円をそのままNPVとして選ばせる選択肢が並びます。NPVの「N」は正味(Net)——出ていくお金を引いた残りという意味です。引き算まで終えて初めてNPVです。
「この機械、入れたほうがいいですかね」。設備投資の相談で診断士が最初に描くのは、投資額と毎年のキャッシュフローの表です。そこに割引率を1本通してNPVを出せば、「やる・やらない」を感覚ではなく円の単位で示せます。社長の意思決定の席で、NPVは共通言語になります。
冒頭の問いに答えます。回収を全部「今のお金」に直した合計から投資額を引く——それがNPVで、プラスならやる、が答えです。冒頭の出資話はNPV+13.73万円で「乗ってよい」でした。次のユニットは実戦編です。試験で点差が生まれるのは式ではなく、CFの拾い方——税金・運転資本・残存価値——だと分かります。