年金現価係数 — 毎年同額は、まとめて巻き戻します
「毎年100万円を、5年間受け取れる権利」を売ってもらえるとしましょう。総額は500万円です。では、この権利にいくらまで払ってよいでしょうか。500万円でないことは、前のユニットで見たとおりです。1年目の100万円と5年目の100万円は、今の値段が違うからです。
1年ずつ巻き戻して5回足すのが正攻法ですが、試験では時間が尽きます。道具は2つあります。係数と、割り算1回です。
「毎年同じ額を受け取る権利」の現在価値は、どうすれば速く正確に計算できるのでしょうか。
毎年同額なら、n年分をまとめて巻き戻す係数があります
毎年の受取額が同じなら、「1年後の1円の今の値段+2年後の1円の今の値段+…+n年後の1円の今の値段」を先に全部足しておけます。この合計が年金現価係数です。あとは毎年の受取額にこの係数を掛けるだけで、n年分の現在価値が一発で出ます。
たとえば割引率10%・5年の年金現価係数は3.791です(本試験では問題文か係数表で与えられます)。毎年100万円×3.791=379.1万円。冒頭の権利の値段は、500万円ではなく約379万円でした。
永遠に続くなら、式はもっと短い。割り算1回です
受取りが「永遠に」続く場合を永久年金と呼びます。式は驚くほど短くなります。
永久年金の式がこの形になる理由は、預金で考えると腑に落ちます。年利5%の世界で200万円を預けると、毎年10万円の利息が元本を崩さずに永遠に出続けます。つまり「毎年10万円を永遠にもらえる権利」と「今の200万円」は交換できる同じ価値です。10万円÷0.05=200万円。割り算1回の正体は、この預金の逆算です。
毎年のCFが一定率gで成長する場合は、分母がr−gに変わります(PV=翌年のCF÷(r−g)、r>gのとき)。発展形ですが、分母を見れば同じ発想だと分かります。
「毎年同額」を見落として、1年ずつ計算し始めるのが最大の罠です
この論点の罠は、計算ミスより時間の浪費です。問題文に「毎年◯万円」とあるのに気づかず、1年目から順に(1.1)で割り始める——5年分の割り算と足し算をしている間に、係数を使う受験生は次の問題に進んでいます。「毎年同額」の文字を見たら係数を探す。これが手筋です。
もう1つ、永久年金の式を「元本も返ってくる」と誤解しないこと。CF÷rは、毎年のCFが永遠に続く流列そのものの現在価値です(預金の例なら、元本を崩さず出続ける利息がそれにあたります)。元本の返済が別途ある有限の問題(貸付金の回収など)は年金現価係数の出番で、永久年金の式は使えません。
「リースにするか、買ってしまうか」。この相談は、毎月・毎年の支払いの流列を現在価値に直して初めて比べられます。係数表を1枚持っていれば、社長の目の前で「リース総額は安く見えますが、今のお金に直すと——」と数字で言えます。流列を一発で今の値段に直す技術は、経営助言の実戦道具です。
冒頭の問いに答えます。毎年同額は「毎年のCF×年金現価係数」で一発、永遠に続くなら「CF÷r」の割り算1回です。次のユニットで、この道具を投資判断の本丸——NPV法——に組み込みます。出ていくお金と入ってくるお金を、ついに同じ土俵に載せます。