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財務・会計 / 投資の意思決定投資
投資の意思決定 1/5 / 約5分

貨幣の時間価値 — 将来のお金は、利息を巻き戻して比べます

「今日100万円受け取る」か「1年後に100万円受け取る」か、どちらかを選べるとしましょう。金額は同じです。それでも、この選択には正解があります。今日の100万円です。

理由は1つです。今日受け取れば、預けて増やせるからです。この1つの理由から、ファイナンスの計算はぜんぶ始まります。式は2本、しかも互いに裏返しです。

この5分の問い

「今日のお金」と「将来のお金」は、どうやって同じ土俵で比べればよいのでしょうか。

直感でつかむ

割引とは、利息の逆再生です

金利10%の世界を考えます。今日の100万円は、1年預けると110万円に育ちます。2年なら121万円、3年なら133.1万円です。増える向きの計算は、誰でも知っている複利です。

では逆に、「1年後の110万円」は今日のいくらと同じ価値でしょうか。答えは100万円です。預ければ110万円になる金額こそが、110万円の「今の値段」だからです。将来のお金を今の値段に直す操作を割引と呼びます。やっていることは、利息を付ける計算の逆再生です。

時間価値の合言葉増やす計算が複利、巻き戻す計算が割引。同じ式の右向きと左向き
厳密に見る

式は2本で1組です。掛ければ将来、割れば現在

今の値段を現在価値(PV)、将来の金額を将来価値(FV)と呼びます。金利r・n年なら、式はこの2本です。

公式FV=PV×(1+r)n / PV=FV÷(1+r)n

数値で確かめます。金利10%で3年後の133.1万円の現在価値は、133.1万円÷(1.1)3=133.1万円÷1.331=100万円。検算します。100万円×1.331=133.1万円で、元に戻りました。

割り算のかたまり1÷(1+r)nには名前が付いています。現価係数です。本試験では「複利現価係数:0.826」のように問題文で与えられることが多く、その場合は将来のお金×係数の掛け算1回で現在価値が出ます。

結論が反転する分かれ目
複利
PV×(1+r)ⁿ=FV
今のお金を将来へ送る。利息が付いて増える向き
割引
FV÷(1+r)ⁿ=PV
将来のお金を今へ戻す。利息を巻き戻す向き
分かれ目 同じ式の右向きと左向き。問題文の問いが「将来価値」か「現在価値」か、末尾を先に確認してから式を選びます。
ここで間違える

「n年後」のnと、割る回数のズレが定番の罠です

誤りの型は2つです。第一に、割引くべき場面で利息を付けてしまう向きの取り違え。「3年後の133.1万円の現在価値」を133.1×1.331と計算すると、選択肢に必ず並んでいる177.1万円台の誤答にきれいに一致します。

第二に、年数のズレです。「2年後」なら(1+r)で2回割ります。1回しか割らない誤答(121万円÷1.1=110万円)も定番です。検算の型=「出た答え×(1+r)nが元の金額に戻るか」。掛け戻して戻らなければ、向きか回数のどちらかを間違えています。

実務では

「この設備、5年で元が取れる計算なんですよ」。社長の試算は、たいてい将来の回収額をそのまま足しています。診断士の最初の一言は「その回収額、今のお金に直して比べてみましょう」です。時間価値の一言が入るだけで、投資判断の助言は素人の電卓から専門家の診断に変わります。

確かめる — 予想してから答え合わせ
この5分のまとめ

冒頭の問いに答えます。将来のお金は(1+r)nで割って「今の値段」に直してから比べます。増やす計算(複利)の逆再生です。次のユニットでは「毎年同じ額を何年も受け取る」場合を、1年ずつ巻き戻さずに一発で計算する道具を手に入れます。