減損会計 — 帳簿を「回収できる見込みの高い方」まで萎ませます
5年前に1,000万円で建てた店舗が、いまや赤字続き。売っても700万円、営業を続けても稼げる見込みは800万円分——なのに帳簿には簿価1,000万円のまま載っています。この帳簿、実態より膨らんでいます。
膨らんだ帳簿を実態まで萎ませる手続が減損会計です。手順は3歩、急所は「高い方」です。
固定資産の帳簿価額が実態より高いとき、どんな手順で、どこまで切り下げるのでしょうか。
「売る」か「使い続ける」か——回収できる見込みの高い方まで下げます
資産からお金を回収する道は2つあります。売る(正味売却価額)か、使い続けて稼ぐ(使用価値=将来キャッシュフローの現在価値)か。合理的な経営者なら高い方の道を選ぶはずなので、回収可能価額=両者の高い方(max)です。
冒頭の店舗なら、売却700万円vs使用価値800万円で、回収可能価額は800万円。帳簿1,000万円との差200万円が減損損失として特別損失に計上され、帳簿は800万円まで萎みます。
手順は「兆候→認識→測定」の3歩です
①兆候の把握——営業損益が継続してマイナス、市場価格の著しい下落、事業の廃止・再編など、減損の疑いがあるかをまず見ます。兆候がなければ先へ進みません。②認識の判定——兆候があれば、帳簿価額を割引前の将来キャッシュフロー総額で回収できるかを確かめます(回収できなければ減損を認識)。③測定——減損損失=帳簿価額−回収可能価額を計算し、特別損失に計上します。
数値で通します。帳簿価額1,000万円・正味売却価額700万円・使用価値800万円。回収可能価額=max(700, 800)=800万円。減損損失=1,000−800=200万円。仕訳は、借方 減損損失200万円/貸方 固定資産200万円です。
maxをminにすり替える——この1点に出題が集中します
「回収可能価額は正味売却価額と使用価値のいずれか低い方」——最頻出の誤り肢です。低い方(min)を使うと、まだ回収できる見込みがあるのに余計に切り下げることになります。合理的な経営者は高い方の道を選ぶから max——理屈ごと覚えれば逆転しません。
もう1つは計上先です。減損損失は臨時の損失なので特別損失。営業費用や営業外費用に置く肢は、P/Lの5段(財務諸表の基礎で学んだ階段)を思い出せば切れます。
「不採算店舗を抱えたままだと、決算にどう響くの?」。減損の3歩は、撤退判断の会計面の見取り図です。営業赤字が続けば兆候に該当し、減損損失が一気に立つ——逆に言えば、撤退・縮小の意思決定を先送りすると損失計上も遅れて膨らみます。事業再編の助言では、この会計インパクトまで添えて初めて経営判断の材料になります。
冒頭の問いに答えます。兆候→認識→測定の3歩で、帳簿価額を回収可能価額(売却と使用の高い方)まで切り下げ、差額を特別損失に計上します。次のユニットは、会計と税務の「ズレの調整」——税効果会計です。