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財務・会計 / 原価計算と業績管理原価
原価計算と業績管理 2/5 / 約5分

労務費と間接費の差異 — 空席の家賃まで数えます

材料費の切り分け(値段か、使いすぎか)を覚えたら、労務費はただの言い換えです。時給のズレか、作業時間のズレか。ところが製造間接費だけは、もう1つ切り口が増えます。

工場の家賃は、フル稼働でも半分稼働でも同じ額が出ていきます。稼働させられなかった分の家賃——この「空席の家賃」を数える差異が加わって、3分法になります。

この5分の問い

労務費の差異はどう分解し、製造間接費の「3分法」では何を3つに切り分けるのでしょうか。

直感でつかむ

労務費は材料費の言い換え、間接費は「予算・能率・操業度」です

労務費の分解は材料費と同型です。賃率差異(時給のズレ=価格差異の親戚)と時間差異(作業時間のズレ=数量差異の親戚)。ベースの固定も同じで、賃率差異は実際時間・時間差異は標準賃率で測ります。

製造間接費の3分法は「予算・能率・操業度」——覚え方は予能操(よのうそう)です。①予算差異=そもそも予算どおりの金額で済んだか。②能率差異=作業を標準時間どおり効率よくこなせたか。③操業度差異=設備をフル稼働(基準操業度)まで使い切れたか。稼働が基準に届かないと、固定費がその分だけ製品に配賦しきれず宙に浮きます——空席の家賃です。

3分法の合言葉予能操=予算(金額)・能率(時間)・操業度(稼働率)。空席の家賃が操業度差異
厳密に見る

式は5本。符号は「標準−実際」「実際−基準」の型で判定します

労務費:賃率差異=(標準賃率−実際賃率)×実際時間時間差異=(標準時間−実際時間)×標準賃率

製造間接費(3分法):予算差異=予算許容額−実際発生額能率差異=(標準時間−実際時間)×標準配賦率(標準配賦率=変動費率+固定費率)、操業度差異=(実際操業度−基準操業度)×固定費率。マイナスなら不利です。

数値で体感します(以下は固定費部分の予算差異・操業度差異の例です)。基準操業度2,000時間/月・予算固定費100万円/月(固定費率=500円/時間)・実際操業度1,800時間・実際固定費105万円。操業度差異=(1,800−2,000)×500=−10万円(不利)——200時間分の空席の家賃です。予算差異=100万−105万=−5万円(不利)——そもそも5万円使いすぎでした。

結論が反転する分かれ目
能率差異
標準時間 vs 実際時間
同じ量を作るのに時間を掛けすぎたか。現場の効率の問題
操業度差異
実際操業度 vs 基準操業度
設備を使い切れたか。稼働率・受注量の問題(空席の家賃)
分かれ目 比べる相手が違います(実際vs標準か、実際vs基準か)。「効率」と「稼働」を入れ替える肢が定番です。
ここで間違える

能率差異と操業度差異の混同が、この論点の主戦場です

どちらも「時間」がらみなので混ざります。切り分けはこうです。能率差異=標準時間と実際時間の差(同じ量を作るのに時間を掛けすぎたか=現場の効率)。操業度差異=実際操業度と基準操業度の差(そもそも設備を使い切れたか=稼働率・受注量の問題)。「効率」と「稼働」を入れ替えた説明肢が定番です。

もう1つ、操業度差異は現場の努力では消しにくい差異です。受注が足りなければフル稼働はできません。「操業度差異は製造現場の能率管理で解消すべき」のような肢は、責任の所在をすり替えています。

実務では

「工場の採算が悪いのは現場のせいだと役員が言うんだが」。3分法はこの決めつけを検証する道具です。能率差異が小さく操業度差異が大きいなら、問題は現場ではなく受注量——打ち手は生産改善ではなく営業強化です。差異の名前が、そのまま経営会議の論点整理になります。

確かめる — 予想してから答え合わせ
この5分のまとめ

冒頭の問いに答えます。労務費は賃率×時間の2分解(材料費と同型)、製造間接費は予能操の3分解——予算(金額)・能率(効率)・操業度(空席の家賃)。次のユニットでは、固定費の「置き場所」そのものを変えると利益がどう見えるか——直接原価計算と全部原価計算の対決です。