材料費差異 — 値段のせいか、使いすぎのせいかを切り分けます
今月の材料費が、予定より5万6千円オーバーしました。工場長は言います。「仕入が高値づかみしたせいだ」。購買担当は言います。「現場が使いすぎたんだ」。どちらの言い分が正しいのか——気合いではなく、計算で決着をつけられます。
標準原価計算の差異分解です。切り分けの工夫は1つ、式は2本です。
材料費が標準(予定)とズレたとき、「価格のせい」と「数量のせい」はどう切り分けて計算するのでしょうか。
相手側の要素を「標準値で固定」すると、責任が混ざりません
ズレの原因は2つしかありません。単価が予定と違った(価格差異=仕入・購買の責任)か、使用量が予定と違った(数量差異=製造現場の責任)か。厄介なのは、両方が同時に起こることです。高い材料を多く使ったら、そのズレはどちらの責任でしょうか。
会計の答えは「相手側の要素は標準値で固定して測る」です。価格差異を測るときは、数量は実際に使った量をそのまま使い、単価のズレだけを見る。数量差異を測るときは、単価は標準に固定し、量のズレだけを見る。この固定のおかげで、2つの差異を足すと全体のズレにぴったり一致します。
符号は「標準−実際」で統一します。マイナスなら不利です
数値で通します。標準=生産1,000個・1個あたり2kg(標準数量2,000kg)・単価500円/kg。実際=使用2,200kg・単価480円/kg。標準材料費=2,000×500=100万円、実際材料費=2,200×480=105.6万円。全体差異=100万−105.6万=−5.6万円(不利)です。
分解します。価格差異=(500−480)×2,200=+4.4万円(有利)——安く買えていました。数量差異=(2,000−2,200)×500=−10万円(不利)——使いすぎです。検算:+4.4万−10万=−5.6万で全体差異と一致。冒頭の言い争いの答えは「現場の使いすぎが主因。仕入はむしろ安く買っていた」でした。
判定は符号の暗記より向きで。実際が標準を上回れば(高く買う・多く使う)不利、下回れば有利です。
価格差異に「標準数量」を使わせる肢が定番です
出題の的は、ベースの取り違えです。価格差異を標準数量で計算させる((500−480)×2,000=+4万円)——正解の+4.4万円のすぐ隣に並びます。「価格差異は実際数量・数量差異は標準単価」の対応を逆にした説明肢も同型です。
もう1つは検算の放棄です。2つの差異の合計が全体差異(標準原価−実際原価)に一致するか——この足し算は10秒で終わり、ベース取り違えの多くはここで発覚します。差異分解は検算までが解法です。
「材料費が予算オーバーなんだが、購買を締めるべきか?」。この相談に差異分解で答えると、締めるべき相手が変わることがあります。価格は有利で数量が不利なら、手を打つのは購買ではなく歩留まり・仕損の改善です。責任の切り分けは、犯人探しではなく打ち手の照準合わせに使います。
冒頭の問いに答えます。価格差異=(標準単価−実際単価)×実際数量、数量差異=(標準数量−実際数量)×標準単価——相手側を標準で固定して切り分け、合計が全体差異に一致するかで検算します。次のユニットは同じ発想の応用編。労務費と、厄介者の製造間接費を「予算・能率・操業度」の3つに分解します。