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財務・会計 / CVP分析CV
CVP分析 1/5 / 約5分

損益分岐点 — 固定費を「限界利益率」で割ります

ラーメン屋を開くとします。家賃とアルバイト代で、月に30万円。これは客が1人も来なくても出ていくお金です。ラーメンは1杯800円で、材料費は1杯につき300円かかります。

さて、月に何杯売れたら、この店は赤字を抜けられるでしょうか。この問いに1本の式で答えるのがCVP分析です。式は1本、落とし穴も1つだけです。

この5分の問い

「いくら売れば赤字にならないか」は、どう計算すればよいのでしょうか。

直感でつかむ

1杯売るごとに、家賃が500円ずつ埋まっていきます

1杯800円のラーメンを1杯売ると、材料費300円が出ていき、手元には500円が残ります。この500円が、月30万円の家賃とアルバイト代を少しずつ埋めていきます。300,000円÷500円=600杯。600杯目でちょうど埋まり切り、601杯目からは1杯につき500円がまるごと利益になります。

この「1杯売るごとに残る500円」に、会計は名前を付けています。限界利益です。売上からラーメン1杯分の材料費のように売れた分だけ増える費用(変動費)を引いた残り、と言い換えられます。家賃のように売れなくても出ていく費用(固定費)は、この限界利益で埋めるしかありません。

CVPの合言葉固定費を、1杯ごとに残るお金(限界利益)で埋めていく。埋まり切る点が損益分岐点
厳密に見る

式は1本です。固定費を、限界利益率で割ります

いま「杯数」で数えた話を「売上高」で言い直すと、試験で使う式になります。売上高のうち限界利益が占める割合を限界利益率と呼びます。ラーメン屋なら500円÷800円=0.625です。

限界利益率=限界利益÷売上高=1−変動費率。そして損益分岐点(BEP)は次の1本です。

公式損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率 / 損益分岐点販売量=固定費÷1個あたり限界利益

数値例で確かめます。売上高1,000万円、変動費率60%、固定費300万円の会社を考えます。限界利益率=1−0.6=0.4。損益分岐点売上高=300万円÷0.4=750万円です。検算します。750万円×0.4=300万円で、固定費とちょうど一致しました。現在の営業利益は、1,000万円×0.4−300万円=100万円です。

下のグラフで、単価・変動費・固定費を動かすと分岐点がどう動くか、式と一緒に確かめられます。

CVP操作グラフ — ラーメン屋の分岐点
20406080万円販売量(個)固定費総費用売上高いまの販売量損益分岐点 600個

損益分岐点数量 = 固定費 ÷(単価 − 単位変動費)= 300,000円 ÷ 500円 = 600個

損益分岐点売上高 = 600個 × 800円 = 480,000円

安全余裕率 =(600 − 600)÷ 600 = 0.0% / 想定利益 =(800 − 300)× 600個 − 300,000円 = 0円

端数が出る場合、分岐点数量を小数第1位で四捨五入し(≒表示)、以降の式はその表示値で計算しています。本試験では問題文の端数処理指示に従ってください。

スライダーで単価・変動費・固定費・販売量を動かすと、損益分岐点と利益/損失、式の数値が即時に更新されます。初期値は本文のラーメン屋(単価800円・材料費300円・固定費30万円)。

結論が反転する分かれ目
変動費率
変動費÷売上高
売上のうち、売れた分だけ出ていく費用の割合。例:0.6
限界利益率
1−変動費率
売上のうち、固定費と利益に残る割合。例:0.4
分かれ目 2つは足すと必ず1(100%)。損益分岐点の分母に使うのは限界利益率の方。変動費率で割る選択肢は罠です。
ここで間違える

分母に「変動費率」を入れてはいけません

この論点の誤答は、ほぼ1種類に集中します。固定費を限界利益率ではなく変動費率で割ってしまう誤りです。さきほどの例なら、300万円÷0.6=500万円。この選択肢は必ずと言ってよいほど並んでいます。

500万円が分岐点でないことは、検算で分かります。売上500万円のとき、変動費は300万円、固定費は300万円で、費用合計600万円。100万円の赤字です。検算の型=「出た答え×限界利益率が固定費と一致するか」。この10秒が、選択肢の罠を無力化します。

実務では

「うちは月にいくら売れたら食っていけるんですか」。顧問先でも創業相談でも、経営者のこの質問は最初に来ます。原価率(変動費率)と家賃・人件費(固定費)の2つを聞き取れば、損益分岐点はその場で計算できます。経営診断の入口で最初に置く数字が、この1本です。

確かめる — 予想してから答え合わせ
この5分のまとめ

冒頭の問いに答えます。「いくら売れば赤字にならないか」=固定費÷限界利益率。ラーメン屋なら600杯、月48万円の売上です。次のユニットでは、この式を半歩進めて「目標の利益を残すにはいくら売るか」を計算します。社長の言う目標は、たいてい「税引後」なのがポイントです。