目標利益の売上高 — 税引後の目標は、まず税引前に戻します
「来期は、最終利益で210万円は残したい」。経営者が目標を語るとき、その数字はたいてい税金を払った後の「手取り」です。
では、そのために必要な売上高はいくらでしょうか。前のユニットの式に利益を足すだけです。ただし、その前に1つだけ変換が要ります。この変換を飛ばす誤りが、この論点の定番の罠です。
税引後の目標利益から、必要な売上高をどう逆算するのでしょうか。
手取りから額面を逆算する、あの計算です
給料の話に置き換えると、構図がそのまま見えます。「手取りで◯万円ほしい」なら、税金や保険料の分だけ額面は大きくないといけません。手取りから出発して額面を逆算する。会社の利益もこれと同じです。
会社の利益には税金がかかります。目標が「税引後」で与えられたら、まず税引前ならいくら必要かに戻します。税率30%なら、手元に残るのは70%。つまり税引後の目標を0.7で割れば、税引前の目標になります。
固定費に税引前の目標利益を足して、限界利益率で割ります
損益分岐点の式は「固定費を限界利益で埋め切る点」でした。目標利益がある場合は、埋めるべき金額が「固定費+目標利益」に増えるだけです。
数値例で通して確かめます。固定費600万円、変動費率60%(限界利益率0.4)、税引後の目標利益210万円、税率30%とします。
手順1、税引前に戻します。210万円÷(1−0.3)=210万円÷0.7=300万円。手順2、式に入れます。(600万円+300万円)÷0.4=900万円÷0.4=2,250万円。
検算します。売上2,250万円なら限界利益は2,250万円×0.4=900万円。固定費600万円を引いて税引前利益300万円。税金30%を引いて300万円×0.7=210万円。目標にちょうど届きました。
税引後の数字を、そのまま式に足してはいけません
罠は1つです。税引後の210万円を変換せずにそのまま足すと、(600万円+210万円)÷0.4=2,025万円。もっともらしい数字が出ますが、この売上で残る税引後利益を検算すると、(2,025万円×0.4−600万円)×0.7=210万円×0.7=147万円。目標に63万円も足りません。
「税引後」と見たら、式に入れる前に(1−税率)で割る。選択肢には「変換を忘れた数字」が必ず並びます。設問文の「税引後」の三文字に印を付けるのが、いちばん安い保険です。
「最終で◯◯万円は残したい」。経営者の目標は、ほぼ例外なく税引後の手取り感覚で語られます。これをそのまま売上計画に入れると、期末に必ず未達になります。目標利益を聞いたら「それは税引後ですか」と確認して先に変換する。これが売上計画づくりの最初の一手です。
冒頭の問いに答えます。税引後の目標利益は(1−税率)で割って税引前に戻し、固定費に足して限界利益率で割る。2段階の逆算です。次のユニットでは、式の中の固定費と変動費率が同時に動く場面、設備投資を扱います。「1個あたりが安くなる」の売り文句には、続きがあります。