BSCとEVA — 成績表を4枚に増やし、資金の家賃まで払います
今期の利益が過去最高でも、顧客が離れ始め、不良品率が上がり、社員が辞めていく会社——財務の成績表1枚だけでは、この危険は写りません。財務の数字は過去の結果であって、未来の原因ではないからです。
成績表を4枚に増やすのがBSC、そして「利益」という言葉の甘さを締め直すのがEVAです。
BSCは何を4つの視点で管理し、EVAは通常の利益と何が違うのでしょうか。
財務は結果の1枚、残り3枚はその原因を写します
BSC(バランスト・スコアカード)の4視点は、①財務(ROE・EVAなど=結果)、②顧客(顧客満足・市場シェア)、③内部プロセス(不良品率・リードタイム)、④学習と成長(従業員満足・研修)。因果はおおむね④→③→②→①——人が育てば業務が良くなり、顧客が増え、財務に実る。この因果の連鎖を1枚の絵にしたものを戦略マップと呼びます。
EVAは利益の定義を締め直します。会社が集めたお金には家賃(WACC)が掛かっている——税引後営業利益から、資金の家賃(WACC×投下資本)を払って、なお残る分だけが本当の価値創造です。
EVAは式1本、BSCは視点とKPIの対応で出題されます
数値で確かめます。NOPAT300万円・WACC8%・投下資本2,500万円なら、資金の家賃=2,500×8%=200万円。EVA=300−200=+100万円。プラスなら資本コストを超える価値を生んでいます。会計上は黒字でも、家賃200万円を払えない利益ならEVAはマイナス——「黒字なのに価値を壊している」状態を検出できるのがEVAの持ち味です。
BSCの出題は、KPIと視点の対応付けが主戦場です。不良品率・リードタイム→内部プロセス、従業員満足度・研修時間→学習と成長、顧客満足度・シェア→顧客、ROE・EVA→財務。「不良品率=顧客の視点」のような1つずらしが定番の誤り肢です。
「EVA=経常利益−支払利息」型のすり替えに注意です
EVAの控除項目はWACC×投下資本——借入利息だけでなく、株主資本のコストまで含めた家賃です。支払利息を引いた経常利益で代用させる肢は、株主のお金をタダ扱いする点で誤り。「利息は払った。でも株主への家賃はまだだ」がEVAの視点です。
BSC側の罠は「財務指標を廃止して非財務だけで管理する手法」という言い切りです。BSCは財務を含めた4視点のバランスであって、財務の否定ではありません。
「業績は数字で管理してる。売上と利益だよ」。この社長にBSCの4視点を見せると、たいてい②〜④のどこかが空白です。空白の視点にKPIを1つ置くだけでも——たとえば不良品率の月次把握——診断の提案として成立します。EVAは金融機関や投資家との対話で「資本コストを意識した経営」を示す語彙になります。
冒頭の問いに答えます。BSCは財務(結果)+顧客・内部プロセス・学習と成長(原因)の4枚で業績を管理し、EVAはNOPATから資金の家賃(WACC×投下資本)を引いた「本当の稼ぎ」を測ります。これで原価計算と業績管理の5ユニットが完結——差異分解から価値創造まで、管理会計の背骨が通りました。