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財務・会計 / 経営分析経営
経営分析 1/5 / 約5分

ROAとROE — どの財布に対する成績かで、%は変わります

「ROE12%の会社」と聞くと、優良企業に見えます。ところが、その12%が借金を厚くしただけの12%だったとしたら、評価は変わってきます。

収益性の指標は、分子と分母の組み合わせで意味がまるで変わります。今日押さえるのは物差し2本と、その間をつなぐ掛け算1本です。

この5分の問い

「資産をうまく使えているか」と「株主のお金をうまく増やしているか」は、それぞれどの指標で測ればよいのでしょうか。

直感でつかむ

会社の全財産に対する成績がROA、株主の元手に対する成績がROEです

会社には2種類の「元手」があります。1つは、借入も含めて会社が動かしている全財産(総資産)。もう1つは、そのうち株主が出した部分(自己資本)です。

ROA(総資産利益率)は前者への成績です。持っているもの全部を使って、どれだけ稼いだか。ROE(自己資本利益率)は後者への成績です。株主が出した元手に対して、最終的にどれだけ稼いだか。同じ会社の同じ利益でも、どの財布に対する成績かで%は変わります。

収益性の合言葉全財産への成績がROA、株主の元手への成績がROE。測る財布が違う
厳密に見る

ROEは、ROAにレバレッジを掛けた姿に分解できます

定義から確認します。ROEの分子は当期純利益(最終利益)、分母は自己資本です。ROAは分母が総資産で、分子は試験の名称に従います——「総資本営業利益率」なら営業利益、「総資本経常利益率」なら経常利益です。

公式ROE=当期純利益÷自己資本 / ROE=(当期純利益÷総資産)×(総資産÷自己資本)

2本目の式が今日の芯です。純利益ベースのROAに、総資産÷自己資本(財務レバレッジ)を掛けるとROEになります。数値で確かめます。当期純利益60万円・総資産1,500万円・自己資本500万円の会社なら、純利益ベースのROA=60÷1,500=4%。レバレッジ=1,500÷500=3倍。ROE=4%×3=12%です。検算します。60÷500=12%で一致しました。

この式が示すのは、借入を増やして自己資本を薄くするだけでもROEは上がるという事実です。稼ぐ力(ROA)が同じでも、レバレッジ3倍なら12%、2倍なら8%。ROEの高さには「稼ぎ方の中身」が隠れています。

結論が反転する分かれ目
ROA
利益÷総資産
借入も含めた全財産への成績。分子は試験の名称(営業利益・経常利益等)に従う
ROE
当期純利益÷自己資本
株主の元手への最終成績。レバレッジで持ち上がる
分かれ目 分母がどの財布か(総資産か自己資本か)。ROEだけが高い会社は、借金の厚さを疑ってレバレッジを確かめます。
ここで間違える

「ROEが高い=良い経営」と即断させるのが定番の罠です

出題者は「ROEが高いほど収益性に優れ、財務の安全性も高い」のような選択肢を置きます。前半だけなら正しく見えますが、ROEはレバレッジで持ち上げられるため、高ROEはむしろ借金の厚さ(安全性の低下)と背中合わせのことがあります。ROEと安全性を1つの選択肢で同時に持ち上げる文は、まず疑ってください。

もう1つは分子の取り違えです。ROEの分子は当期純利益。営業利益でROEを計算させる誤り選択肢が並びます。「株主への最終成績だから最終利益」と結びつけて固定します。

実務では

「うちのROE、同業より高いんだよ」。診断の席でこの自慢を聞いたら、次の一手は決まっています。総資産÷自己資本を計算して、その高さが稼ぐ力か借金の厚さかを切り分けることです。切り分けた瞬間に、助言は「すごいですね」から「レバレッジが効いている分、金利上昇に備えましょう」に変わります。

確かめる — 予想してから答え合わせ
この5分のまとめ

冒頭の問いに答えます。資産の使い方はROA(分母=総資産)、株主のお金の増やし方はROE(分子=当期純利益・分母=自己資本)で測ります。そしてROE=純利益ベースのROA×レバレッジ。次のユニットでは、この分解をもう1段細かくして、「同じROEなのに稼ぎ方がまるで違う会社」を見抜く道具——デュポンの3分解——を手に入れます。