ROAとROE — どの財布に対する成績かで、%は変わります
「ROE12%の会社」と聞くと、優良企業に見えます。ところが、その12%が借金を厚くしただけの12%だったとしたら、評価は変わってきます。
収益性の指標は、分子と分母の組み合わせで意味がまるで変わります。今日押さえるのは物差し2本と、その間をつなぐ掛け算1本です。
「資産をうまく使えているか」と「株主のお金をうまく増やしているか」は、それぞれどの指標で測ればよいのでしょうか。
会社の全財産に対する成績がROA、株主の元手に対する成績がROEです
会社には2種類の「元手」があります。1つは、借入も含めて会社が動かしている全財産(総資産)。もう1つは、そのうち株主が出した部分(自己資本)です。
ROA(総資産利益率)は前者への成績です。持っているもの全部を使って、どれだけ稼いだか。ROE(自己資本利益率)は後者への成績です。株主が出した元手に対して、最終的にどれだけ稼いだか。同じ会社の同じ利益でも、どの財布に対する成績かで%は変わります。
ROEは、ROAにレバレッジを掛けた姿に分解できます
定義から確認します。ROEの分子は当期純利益(最終利益)、分母は自己資本です。ROAは分母が総資産で、分子は試験の名称に従います——「総資本営業利益率」なら営業利益、「総資本経常利益率」なら経常利益です。
2本目の式が今日の芯です。純利益ベースのROAに、総資産÷自己資本(財務レバレッジ)を掛けるとROEになります。数値で確かめます。当期純利益60万円・総資産1,500万円・自己資本500万円の会社なら、純利益ベースのROA=60÷1,500=4%。レバレッジ=1,500÷500=3倍。ROE=4%×3=12%です。検算します。60÷500=12%で一致しました。
この式が示すのは、借入を増やして自己資本を薄くするだけでもROEは上がるという事実です。稼ぐ力(ROA)が同じでも、レバレッジ3倍なら12%、2倍なら8%。ROEの高さには「稼ぎ方の中身」が隠れています。
「ROEが高い=良い経営」と即断させるのが定番の罠です
出題者は「ROEが高いほど収益性に優れ、財務の安全性も高い」のような選択肢を置きます。前半だけなら正しく見えますが、ROEはレバレッジで持ち上げられるため、高ROEはむしろ借金の厚さ(安全性の低下)と背中合わせのことがあります。ROEと安全性を1つの選択肢で同時に持ち上げる文は、まず疑ってください。
もう1つは分子の取り違えです。ROEの分子は当期純利益。営業利益でROEを計算させる誤り選択肢が並びます。「株主への最終成績だから最終利益」と結びつけて固定します。
「うちのROE、同業より高いんだよ」。診断の席でこの自慢を聞いたら、次の一手は決まっています。総資産÷自己資本を計算して、その高さが稼ぐ力か借金の厚さかを切り分けることです。切り分けた瞬間に、助言は「すごいですね」から「レバレッジが効いている分、金利上昇に備えましょう」に変わります。
冒頭の問いに答えます。資産の使い方はROA(分母=総資産)、株主のお金の増やし方はROE(分子=当期純利益・分母=自己資本)で測ります。そしてROE=純利益ベースのROA×レバレッジ。次のユニットでは、この分解をもう1段細かくして、「同じROEなのに稼ぎ方がまるで違う会社」を見抜く道具——デュポンの3分解——を手に入れます。