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財務・会計 / 経営分析経営
経営分析 2/5 / 約5分

デュポン3分解 — 同じROEでも、稼ぎ方はまるで違います

3つの店を考えましょう。1軒目は高級品を少しだけ売って、1個あたりの利益で稼ぐ店。2軒目は薄利多売で、回転の速さで稼ぐ店。3軒目は借入で店舗を一気に増やした店。

この3軒のROEが、そろって20%だったとします。点数は同じでも、稼ぎ方と危うさは別物です。ROEを3つの掛け算にほどくと、その違いが数字で見えます。

この5分の問い

ROEが同じ2社の「稼ぎ方の違い」と「リスクの違い」は、どうすれば数字で見抜けるのでしょうか。

直感でつかむ

ROEは「利益率×回転率×レバレッジ」の掛け算にほどけます

ROE=当期純利益÷自己資本の分子と分母の間に、売上高と総資産を挟み込むと、3つの部品に分解できます。売上高純利益率(1円の売上からいくら残すか)、総資産回転率(財産を1年に何回売上に変えるか)、財務レバレッジ(自己資本の何倍の財産を動かしているか)です。

冒頭の3軒はこう読めます。高級店=利益率で稼ぐ。薄利多売店=回転率で稼ぐ。借入拡大店=レバレッジで膨らませる。掛け算の答えが同じ20%でも、どの部品が大きいかで会社の性格が決まります

デュポンの合言葉ROE=利益率×回転率×レバレッジ。点数より部品を見る
厳密に見る

3つの部品は、分子分母がドミノのようにつながっています

公式ROE=(当期純利益÷売上高)×(売上高÷総資産)×(総資産÷自己資本)

隣り合う分母と分子(売上高と売上高、総資産と総資産)が約分で消えて、当期純利益÷自己資本=ROEに戻る仕組みです。数値で確かめます。売上高2,000万円・当期純利益100万円・総資産1,000万円・自己資本500万円の会社なら——利益率=100÷2,000=5%、回転率=2,000÷1,000=2回、レバレッジ=1,000÷500=2倍。ROE=5%×2×2=20%。検算すると100÷500=20%で一致します。

試験では、3部品のうち2つとROEを与えて残り1つを逆算させる出題が定番です。掛け算の穴埋めなので、ROE÷(与えられた2部品の積)で出ます。

結論が反転する分かれ目
利益率型
高級品・少量販売
売上高純利益率が高い。1個あたりの取り分で勝負
回転型
薄利多売
総資産回転率が高い。量とスピードで勝負
分かれ目 どちらも健全な稼ぎ方。危ういのは第3の部品——レバレッジだけが大きい会社です。
ここで間違える

レバレッジで持ち上げたROEを「収益力の向上」と読ませます

前年からROEが上がった会社について、「収益性が改善した」と述べる選択肢が定番の罠です。3分解して、上がったのが利益率や回転率ではなくレバレッジだけなら、それは借入が厚くなっただけで、稼ぐ力は変わっていません。不況が来たとき真っ先に苦しむのは、レバレッジで膨らませた会社です。

もう1つ、回転率の分母は総資産です。自己資本で割ってしまうと、レバレッジと混ざった意味不明の数字になります。3部品の分母(売上高・総資産・自己資本)の並び順ごと覚えてください。

実務では

「利益は出てるのに、なんでうちは苦しいんだろう」。この相談には、同業平均とのデュポン比較が効きます。利益率は平均並みなのに回転率が半分なら、問題は値付けではなく在庫と遊休資産です。3つの部品のどれが劣っているかで、打ち手(値付け・資産圧縮・借入方針)がそのまま決まります。

確かめる — 予想してから答え合わせ
この5分のまとめ

冒頭の問いに答えます。ROEを利益率×回転率×レバレッジにほどけば、同じ点数の裏にある稼ぎ方の違いと、レバレッジ頼みの危うさが数字で見えます。次のユニットでは、このうち「回転」を時間の単位に直します。お金が入る日と払う日の綱引き——CCCです。