安全性分析 — 「今月払えるか」と「体質として強いか」を分けて測ります
今月の請求書が10万円。手元で動かせるお金が20万円あれば、余裕をもって払えます。8万円しかなければ、どこかから工面しなければなりません。会社の安全性分析は、突き詰めればこの確認です。
ただし「今月払えるか」と「体質として借金に頼りすぎていないか」は別の検査です。短期の物差し2本と、長期の物差し2本を仕分けして持ち帰ってください。
会社が「支払えなくなるリスク」は、短期と長期でそれぞれどの指標で測ればよいのでしょうか。
短期は「請求書と手元のお金の比率」、長期は「ローンの厚さ」です
短期の検査は流動比率です。1年以内に払うもの(流動負債)に対して、1年以内にお金になるもの(流動資産)が何倍あるか。請求書10万円に手元20万円なら200%です。さらに厳しめの検査が当座比率——流動資産から棚卸資産を外します。在庫は「売れたら」お金になるもので、売れるまでは当てにしないという見方です。
長期の検査は自己資本比率です。会社の全財産のうち、返さなくてよいお金(自己資本)が何割か。低い会社は、頭金ほぼゼロのフルローンで家を買った状態に似ています——毎月は回っていても、金利上昇や収入減に弱い体質です。
定義と目安を4本、まとめて固定します
数値例です。流動資産300万円・うち当座資産150万円・流動負債200万円・自己資本400万円・総資本1,000万円の会社なら——流動比率=300÷200=150%、当座比率=150÷200=75%、自己資本比率=400÷1,000=40%です。当座資産とは現金預金・受取手形・売掛金・短期保有の有価証券——つまり棚卸資産を除いた、すぐ動かせる資産です。
教科書の目安は、流動比率200%以上・当座比率100%以上が理想(あくまで目安です)。ICR(インタレスト・カバレッジ・レシオ)は利払い能力の検査で、営業利益80万円+受取利息4万円・支払利息12万円なら84÷12=7倍。1倍未満は、本業の稼ぎで利息すら払えない状態を意味します。
長期にはもう1組、固定比率(固定資産÷自己資本)と固定長期適合率(固定資産÷(自己資本+固定負債))があります。どちらも100%以下が理想——長く使う資産は、長く使えるお金で買うべし、という原則の数値化です。
流動比率と当座比率の差は「在庫」。ここを突かれます
定番の罠は、流動比率が高い会社を無条件に「短期の安全性が高い」と言い切る選択肢です。流動資産の中身が売れ残った在庫の山なら、流動比率150%でも当座比率は75%まで落ちます。2つの比率の差が大きい会社を見たら、在庫の質を疑う——これが出題者の想定する読み筋です。
もう1つ、固定長期適合率の分母は「自己資本+固定負債」です。固定比率(分母=自己資本のみ)との取り違えを誘う選択肢が並びます。「長期のお金2種類(返さなくてよいお金+長期で借りたお金)で固定資産を賄えているか」と意味で覚えれば混ざりません。
「銀行がうちの決算書のどこを見てるのか知りたい」。融資の場面で金融機関がまず見るのは、この安全性の系統です。自己資本比率とICRが弱い会社には、利益改善より先に「役員借入金の資本組入れ(DES)」「遊休資産の売却」といった財務体質の打ち手を提案する——指標がそのまま助言の優先順位になります。
冒頭の問いに答えます。短期は流動比率・当座比率(在庫を当てにするかどうかで2段構え)、長期は自己資本比率、利払いはICR。ここまでで収益性・効率性・安全性の3系統がそろいました。最後のユニットは、事例IVの定番「3つの指標を挙げよ」——与件文の症状から、3系統のどれを選ぶかの型です。