指標選択 — 検査は3系統から1つずつ選びます
2次試験・事例IVの第1問は、長年ほぼ同じ問いで始まります。「D社の財務指標のうち、課題(または優れている点)を示す指標を3つ挙げよ」。制限時間の中で、数十ある指標から3つを選ぶ——ここで迷う受験生と迷わない受験生の差は、知識量ではなく選び方の型を持っているかどうかです。
型は1行で書けます。3系統から1つずつ、です。
与件文の情報から、どうやって迷わず「3つの指標」を選べばよいのでしょうか。
収益性・効率性・安全性——別系統の検査を1つずつ選びます
ここまでの3ユニットで見たとおり、経営分析には3つの系統があります。収益性(稼げているか)・効率性(資産が回っているか)・安全性(支払えるか)。同じ系統から2つ選ぶと、同じ症状を2回指摘することになり、診断としての情報量が増えません。
だから原則は3系統から1つずつ。健康診断で、血圧だけ3回測る人はいません。系統ごとに1つ、与件文の症状に最も合う検査を選びます。
与件文のキーワードが、系統内のどの指標かまで決めてくれます
系統の中でどの指標を選ぶかは、与件文の記述が指定してくれます。対応表を固定しましょう。
収益性:「売上原価が高い・原材料高騰」→売上高総利益率。「販管費がかさむ」→売上高営業利益率。「借入金の利息負担」→売上高経常利益率。手がかりがなければ売上高営業利益率(最も汎用)。
効率性:「在庫が多い・売れ残り」→棚卸資産回転率(回転日数)。「売掛金の回収が遅い」→売上債権回転率(回転日数)。「遊休資産・過大な設備」→有形固定資産回転率や総資産回転率。手がかりがなければ総資産回転率。
安全性:「短期の支払いに不安」→流動比率・当座比率。「借入金が多い」→自己資本比率・負債比率。「利息の負担が重い」→ICR。手がかりがなければ自己資本比率。
つまり解答手順は——①与件文から症状のキーワードを拾う→②系統に振り分ける→③対応表で指標名を確定する→④計算して同業平均・前期と比較する、の4手です。
答えが出たあとの「異常値」に気づけるかで、もう1点差がつきます
選択と計算が正しくても、転記や桁のミスは起こります。最後の砦は異常値センサーです。利益率が100%を超えたら計算ミス。ROEが50%超なら要確認。流動比率が10%以下も要確認。NPVが投資額の10倍を超えたら疑う。損益分岐点が実際の売上高を大幅に超えていたら、前提から見直す。
「あり得ない数字は、たいてい自分のミス」——電卓のない1次でも、数字の桁感覚そのものが検算になります。おかしいと感じたら、分母と分子の取り違えから確かめてください。
「要するに、うちの何が問題なんですか」。診断報告の冒頭で経営者に渡す答えが、まさにこの3つの指標です。系統を散らして選ぶのは試験テクニックではなく、収益・資産効率・財務体質という別々の急所を1枚で見せる報告の作法そのものです。実務の診断報告書も、この3点セットから始まります。
冒頭の問いに答えます。与件文の症状を拾い、収益性・効率性・安全性の3系統に振り分け、系統ごとに1つずつ対応表で確定する——迷いが消えるのは、選択肢が系統で絞られるからです。これで経営分析の5ユニットが完結しました。3系統の指標を通しでドリルして、事例IV第1問を得点源にしてください。