複数製品の損益分岐点 — 限界利益率は単純平均してはいけません
ランチとディナーの両方をやっている店を考えます。ディナーの方が利益率は高い。では、店全体の損益分岐点を出すとき、2つの利益率を「足して2で割って」よいでしょうか。
答えは、よくありません。そして試験の選択肢には、その「足して2で割った」数字がきちんと並んでいます。
製品や部門が複数あるとき、全社の損益分岐点はどう計算するのでしょうか。
売れ筋の利益率が、全体を引っ張ります
売上の6割がランチの店なら、店全体の利益率はランチ寄りになります。逆に、売上のほとんどがディナーなら、全体はディナー寄りです。全体の利益率は、たくさん売れているものの利益率に引っ張られる。この当たり前を式にしたのが「加重平均」です。
「足して2で割る」単純平均は、売れ筋も死に筋も同じ重さで扱ってしまう計算です。売上構成が偏っているほど、答えは実態から離れます。
加重平均限界利益率を作ってから、いつもの式に入れます
手順は2段です。まず加重平均限界利益率=Σ(各製品の限界利益率×売上構成比)。次に、損益分岐点売上高=固定費÷加重平均限界利益率。2段目は基本形と同じです。
数値例で確かめます。部門Aは限界利益率20%で売上構成比25%、部門Bは限界利益率60%で売上構成比75%、全社の固定費は1,000万円とします。
加重平均限界利益率=0.2×0.25+0.6×0.75=0.05+0.45=0.5。損益分岐点売上高=1,000万円÷0.5=2,000万円です。
検算します。売上2,000万円が構成比どおりに分かれると、Aが500万円(限界利益100万円)、Bが1,500万円(限界利益900万円)。限界利益の合計は1,000万円で、固定費とちょうど一致します。
なお、この計算は売上構成比が一定に保たれるという前提の上に立っています。構成比が変われば、加重平均も分岐点も動きます。
「足して2で割る」と、分岐点を大きく見誤ります
さきほどの例を単純平均で解くと、(20%+60%)÷2=40%。分岐点は1,000万円÷0.4=2,500万円と出ます。正しい答えは2,000万円でした。500万円も過大です。売上の75%を占める高利益率のBを、Aと同じ重さに薄めてしまったからです。
誤差の向きは構成次第で逆にもなります。確実なのは向きの暗記ではなく、手順の固定です。「構成比を掛けてから足す」。掛け算が先、足し算が後です。
「うちは事業がいくつもあるから、どんぶり勘定ですわ」。複数事業の会社ほど、全社の損益分岐点は答えられないものです。部門別の限界利益率と売上構成比さえ聞き取れば、全社の分岐点は1本の式に載ります。どんぶりに見える会社の構造を1枚の数字にして見せることが、診断の最初の説得力になります。
冒頭の問いに答えます。複数製品の損益分岐点は、売上構成比で加重平均した限界利益率で固定費を割る。単純平均の選択肢は罠です。最後のユニットでは、計算した分岐点と実際の売上の「距離」を測る物差し、安全余裕率に進みます。