事例IVのCVP計算 — 差がつくのは、固変分解と端数処理です
事例IVのCVP設問に出てくる式そのものは、1次試験で覚えた1本——固定費÷限界利益率——から変わりません。けれど本試験の答案では、この式にたどり着く前の作業で差がついています。
財務諸表の科目名がそのまま「固定費」「変動費」に色分けされているわけではありません。与件文の一文から、どの費目が売上に比例し、どの費目が売上と無関係に発生するのかを自分で仕訳ける必要があります。加えて、単価や原価が変わる「もしも」の設問、税引後の目標利益から逆算する設問、そして最後には端数処理の指示——ここで得点が割れます。
事例IVのCVP設問で、公式を知っている受験生どうしに差がつくのはどこにあるのでしょうか。
固変分解は与件文で行います——費目ごとに、変動費か固定費かを判定します
CVP分析の式そのものは1次で学んだとおりです——損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率(限界利益率=1-変動費率)。事例IVで新たに問われるのは、この式の分子と分母を与件文からどう作るかです。財務諸表の勘定科目は、そのままでは「固定費」「変動費」に分類されていません。「原材料費は生産量に比例して発生する」とあれば変動費、「正社員の人件費は生産量にかかわらず一定である」とあれば固定費——与件文(や財務諸表の注記)の記述が分解の根拠です。
設問の中には、単価・変動費率・固定費のいずれかが変化する「もしも」を扱うものもあります。この場合は変更後の値でBEPを丸ごと再計算するのが原則です。たとえば固定費600万円・変動費率60%(BEP=600万円÷0.4=1,500万円)の会社が、固定費が200万円増えて800万円になり、同時に変動費率が50%に改善したとします。改善後のBEP=800万円÷0.5=1,600万円——固定費の増加が変動費率の改善を上回り、BEPはかえって100万円悪化しました。
税引後の目標から逆算するときは、税引前に割り戻してから式に入れます
事例IVの目標利益は「税引後で〇〇万円残したい」という形で与えられることが多く、そのまま式の分子に入れると答えを間違えます。税引後目標利益を1-税率で割り戻して税引前の目標利益に直してから、固定費に足すのが手順です。
数値で確かめます。固定費600万円・変動費率60%(限界利益率0.4)の会社が、税引後で300万円の利益を残したいとします。税率30%なら、税引前目標利益=300万円÷(1-0.3)=300万円÷0.7≈428.6万円。目標売上高=(600万円+428.6万円)÷0.4≈2,571.4万円です。
もう1つ、計算量を減らす手筋があります。単価や原価がわずかに変わるだけの設問では、全体を最初から計算し直さず、変化した分だけを計算する増分分析で済むことが多いとされます。固定費が増えた分だけを見るなら、固定費増加額÷限界利益率=固定費回収に必要な追加売上高、という具合です。
税引前後の混同と、端数処理の指示を読み飛ばすことが的です
定番の誤りは税引後目標利益をそのまま式の分子に使ってしまうことです。先の例なら、300万円をそのまま使って(600万円+300万円)÷0.4=2,250万円としてしまう——税率で割り戻す1手間が抜けています。
もう1つの的は端数処理の指示を読み飛ばすことです。事例IVの設問は「小数点以下第2位を四捨五入」「万円未満切り捨て」のように端数処理の指示を明示することが多く、指示と異なる丸め方をすると、計算の筋が合っていても不正解になり得ます。答えを出す前に、設問文の端数処理の指示を必ず確認する——これも事例IVの得点マナーの一つとされます。
顧問先の会議室で「値上げしたら、どこまで利益が残りますか」と聞かれたとき、答えるべきはBEPの式そのものではなく、その手前の作業です。原価のどの部分が仕入数量に連動し、どの部分が家賃のように固定なのか——与件文の代わりに、決算書と社長の話から自分でヒアリングして仕訳ける。この仕訳け作業こそ、事例IVの固変分解と同じ頭の使い方です。
冒頭の問いに答えます。事例IVのCVP設問で差がつくのは式そのものではなく、与件文からの固変分解、数値が変わったときの再計算(増分分析も含む)、税引後目標からの逆算、そして端数処理の指示の確認です。次は、CVPと並ぶもう1つの計算領域——投資の経済性計算へ。