ソロー・モデル — 機械を増やすだけの成長は、いずれ頭打ちになります
経済を成長させるものは3つしかありません。貯蓄して機械や工場に投資する。働き手が増える。技術が進歩する。——では、貯蓄率をどんどん上げれば、経済は永遠に速く成長できるのでしょうか。
ソロー・モデルの答えは「できない」。機械を増やすだけの成長はいずれ頭打ちになり、最後に残る成長の源泉はただひとつです。
資本蓄積による成長はなぜ頭打ちになり、持続的な成長の源泉は何なのでしょうか。
機械の増加はいずれ「摩耗と人口増」に食われます
機械が増えれば生産は増えます。しかし限界生産力は逓減——10台目の機械がもたらす増産は、1台目よりずっと小さい。一方で、機械は摩耗し(資本減耗)、働き手が増えれば1人あたりの機械は薄まります。
やがて「貯蓄による機械の追加」と「摩耗・人口増による目減り」がちょうど釣り合う定常状態に行き着き、1人あたりの資本と所得は一定になります。そこから先も1人あたり所得を伸ばし続けられるのは技術進歩だけ——これがソロー・モデルの核心です。
定常状態の式と黄金律・収束仮説まで一気に固めます
1人あたり資本kの動きは Δk=s·f(k)−(n+g+δ)k(s:貯蓄率、n:人口成長率、g:技術進歩率、δ:資本減耗率)。定常状態は流入と流出が釣り合う s·f(k*)=(n+g+δ)k* で決まります。貯蓄率を上げると定常状態の水準は上がりますが(水準効果)、定常状態での成長率は変わりません。
黄金律は「定常状態の消費を最大にする資本水準」——条件は f′(k*)=n+g+δ。貯蓄しすぎ(投資過多)でも、しなさすぎ(資本不足)でも消費は最大になりません。あわせて収束仮説(貧しい国ほど成長率が高く、条件が似た国同士は追いつく——条件付き収束)と、成長会計の残差=ソロー残差(TFP・全要素生産性)も問われます。
「貯蓄率を上げれば成長率が上がり続ける」が最大の誤り肢です
最頻出の誤り肢は「貯蓄率の引き上げにより、長期的な経済成長率を高めることができる」——誤り。貯蓄率の引き上げは定常状態の所得水準を高めるだけで、定常状態に達した後の成長率は技術進歩率で決まります。「水準は上がる・成長率は変わらない」の区別が急所です。
黄金律の取り違えにも注意——最大化するのは生産でも資本でもなく消費です。「生産を最大化する貯蓄率」とする肢が並びます。
設備投資の相談に、ソローの発想は静かに効きます。「機械を買い足せば売上が伸びる」は最初のうちだけ——限界生産力の逓減は町工場でも起きます。ある水準から先は、設備の追加より工程改善や新技術の導入(生産性=TFPの改善)に投資を振り向ける方が伸びる——「量の投資から質の投資へ」の切り替え時期を見立てるのが診断士の仕事です。
冒頭の問いに答えます。資本蓄積による成長は限界生産力の逓減により定常状態(s·f(k*)=(n+g+δ)k*)で頭打ちになり、持続的な1人あたり成長の源泉は技術進歩だけです(黄金律は消費最大化:f′(k*)=n+g+δ)。——これで経済学・経済政策の収穫候補は完走です。ドリルで仕上げてください。