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経済学・経済政策 / 経済学の仕上げ経済
経済学の仕上げ 3/6 / 約5分

AD-AS — 給料は物価に遅れてついてくるから、短期のASは右上がりです

IS-LMの世界では、物価は動かない前提でした。最後の拡張として物価を動かします——すると「不況なのにインフレ」という、1970年代に世界が実際に苦しんだ最悪の組み合わせまで説明できるようになります。

登場する曲線は2本。総需要(AD)と総供給(AS)、急所は短期ASが右上がりな理由です。

この5分の問い

AD曲線・AS曲線はなぜその形で、インフレの2つの型はどちらがスタグフレーションを生むのでしょうか。

直感でつかむ

物価が下がるとGDPが増える(AD)、給料が遅れるから短期は増産できる(AS)

AD曲線(右下がり):物価が下がると、手持ちのお金の実質的な価値が上がります(実質貨幣供給の増加→LM右シフト→GDP増)。物価↓でGDP↑、だから右下がり。財政・金融の拡張(G↑・M↑)はADを右にシフトさせます。

短期AS曲線(右上がり):物価が上がっても、給料はすぐには上がりません(賃金の硬直性)。企業から見れば実質的な人件費が下がるので、雇用を増やして増産する——物価↑でGDP↑。長期には給料が物価に追いつくため、この効果は消え、長期ASは完全雇用水準で垂直です。

AD-ASの合言葉短期ASの右上がり=給料は物価に遅れる。長期は追いついて垂直
厳密に見る

インフレの2つの型——押し上げる犯人がADかASかで結末が違います

需要インフレ(ディマンドプル):景気過熱でADが右シフト。物価もGDPも上がる——「良いインフレ」寄りの型です。費用インフレ(コストプッシュ):原油高などのコスト上昇でASが左シフト。物価は上がるのにGDPは下がる——インフレと不況の同時進行=スタグフレーションです(1970年代のオイルショックが実例)。

逆向きの悪循環も1つ。デフレスパイラル=物価下落→実質的な借金の重み増加→需要減→さらなる物価下落。デフレが「モノが安くなって嬉しい」だけで済まない理由です。

結論が反転する分かれ目
ディマンドプル
AD右シフト
物価↑・GDP↑。景気過熱型
コストプッシュ
AS左シフト
物価↑・GDP↓=スタグフレーション。オイルショック型
分かれ目 動いた曲線がどちらかを最初に確定——スタグフレーションの犯人はAS左シフトです。
ここで間違える

「スタグフレーションは需要インフレから生じる」——犯人の取り違えが定番です

スタグフレーションを生むのはAS左シフト(コストプッシュ)です。AD右シフト(需要インフレ)は物価もGDPも上げるので、不況と同時には来ません。「どちらの曲線が動いたか」を最初に確定させれば、物価とGDPの向きの組み合わせは機械的に出ます。

ASの形の根拠も問われます。「短期AS曲線が右上がりなのは、技術進歩のためである」——誤り。根拠は賃金の硬直性(給料が物価に遅れる)です。長期に垂直へ変わる理由(賃金の追いつき)とセットで固定します。

実務では

「原材料も人件費も上がって、値上げしても利益が出ない」。コストプッシュの波は、まさに中小企業の現場に一番早く届きます。需要が強くて物価が上がる局面(価格転嫁が通りやすい)か、コストだけが押し上げる局面(転嫁が通りにくい)か——インフレの型の見立ては、価格戦略の助言の前提になります。

確かめる — 予想してから答え合わせ
この5分のまとめ

冒頭の問いに答えます。ADは実質貨幣の効果で右下がり、短期ASは給料の遅れで右上がり(長期は垂直)、そしてスタグフレーションを生むのはAS左シフト(コストプッシュ)です。次のユニットは、インフレと失業の関係をさらに一歩——「インフレで失業を買えるのは短期だけ」、フィリップス曲線です。