マンデル=フレミング — 為替は政策の増幅器にも、帳消し機にもなります
IS-LMで学んだ結論——財政も金融もGDPを増やす——は、実は「鎖国」の話でした。国境を開けて、お金が金利差を求めて自由に動き、為替レートが変わる世界にすると、どちらか片方の政策が帳消しになります。
どちらが帳消しになるかは、為替相場制度で決まります。覚え方は4文字——変金・固財です。
変動相場制と固定相場制では、財政政策・金融政策の効き目はそれぞれどうなるのでしょうか。
変動相場では、円高が財政の効果を打ち消します
変動相場制での財政政策(G↑):金利が上がる(IS-LMで見たとおり)→ 高い金利を求めて海外からお金が流入 → 円高 → 輸出が減る → せっかく増えたGDPが押し戻される。為替が帳消し機として働き、財政政策は無効に近づきます。
変動相場制での金融政策(M↑):金利が下がる → お金が海外へ流出 → 円安 → 輸出が増える → GDPの増加が上乗せされる。為替が増幅器として働き、金融政策はより有効になります。固定相場制では、この因果がそっくり裏返ります。
4パターンの理屈を1周し、トリレンマで締めます
(資本移動が自由な前提で)変動×財政=無効(金利↑→資本流入→円高→純輸出減で帳消し)。変動×金融=有効(金利↓→資本流出→円安→純輸出増で増幅)。固定×財政=有効(資本流入が通貨買い圧力になるが、固定を守るため中央銀行が自国通貨を売る→貨幣供給が増えて効果を後押し)。固定×金融=無効(金利↓で資本流出→通貨売り圧力→固定を守るため外貨を売って自国通貨を買い戻す→せっかく増やした貨幣供給が元に戻る)。
締めは国際金融のトリレンマです。「固定相場制」「独立した金融政策」「自由な資本移動」の3つは同時に2つまでしか実現できません。日本は変動相場制を選ぶことで、独立した金融政策と自由な資本移動を確保しています。
「変金・固財」の4マスを1つだけ入れ替える肢が定番です
出題は4パターンのマトリクスの1マスを裏返してきます。「変動相場制の下では財政政策が有効である」「固定相場制の下では金融政策により所得を増加させられる」——どちらも誤り。変金・固財の4文字で瞬殺できますが、理屈(為替の増幅器/帳消し機)まで持っておくと、応用の肢にも耐えられます。
トリレンマ側は「3つすべてを同時に達成する政策の組み合わせ」を選ばせる罠。3つ同時は不可能、が定理そのものです。
「円安で仕入れが苦しい。政府は何とかしてくれないのか」。輸入商材を扱う経営者との会話で、金融政策と為替の連動(緩和→円安)の因果を説明できると、ニュースの半歩先を読む支援ができます。為替は誰かの陰謀ではなく政策の随伴現象——この見取り図は、価格転嫁やヘッジの意思決定の土台になります。
冒頭の問いに答えます。変動相場制では金融政策が有効(円安の増幅器)で財政政策は無効(円高の帳消し機)、固定相場制では逆——変金・固財。3つの願い(固定相場・独立金融・自由な資本移動)は2つまで。次のユニットは物価の測り方——GDPデフレーターとCPIの「買い物かごの年式」です。