サービス — 試着できず、作り置きもできない商売の理論です
美容院の商売を考えます。ヘアカットは買う前に試せない。美容師がいなければ成立しない。同じ美容師でも日によって仕上がりが違う。そして空いた席の「今日の15時」は、明日に取っておけない——。
モノとサービスの根本的な違いがこの4つに詰まっています。試験は4特性の名称と説明の対応を突いてきます。
モノとサービスは何が根本的に違い、その品質はどう測り、何が収益につながるのでしょうか。
無形性・不可分性・変動性・消滅性——美容院で4つ揃います
無形性——形がなく、買う前に見たり試したりできない(だから口コミや実績の「見える化」が効く)。不可分性——生産と消費が同時で、提供者と切り離せない(カットは美容師とあなたが同席して初めて成立)。
変動性——提供者・時間・状況によって品質が揺れる(同じ美容師でも体調で変わる。だからマニュアルと教育)。消滅性——在庫できない(空いた席は翌日に持ち越せない。だから予約制と価格での平準化)。
SERVQUALの5次元と、従業員満足から始まる利益の連鎖
サービス品質の測定装置がSERVQUAL(パラシュラマン・ザイタムル・ベリー)——品質を知覚と期待の差(知覚−期待)で捉え、有形性・信頼性・応答性・確実性・共感性の5次元で測ります。期待を煽りすぎる広告が満足を下げる理由も、この引き算で説明できます。
サービス・プロフィット・チェーン(ヘスケットら)は利益までの因果の鎖——内部サービス品質→従業員満足→従業員ロイヤルティ→外部サービス価値→顧客満足→顧客ロイヤルティ→収益性・成長。起点が顧客ではなく従業員である点が、この理論の主張です。
不可分性と消滅性の混同、連鎖の起点が定番の的です
定番の誤り肢は4特性の説明の入れ替え——「生産と消費が同時であることを消滅性という」(誤り——それは不可分性。消滅性は在庫できないこと)。「同時」と「在庫」は別の話、と切り分けてください。
プロフィット・チェーンでは「起点は顧客満足である」が誤りの典型——鎖の起点は内部サービス品質と従業員満足です。従業員を飛ばして顧客満足だけ追う施策は、この理論の否定した相手です。
飲食・美容・介護——診断士の顧客の多くはサービス業で、4特性はそのまま打ち手の地図になります。無形性には施術例の写真と口コミ、変動性にはマニュアルと研修、消滅性には予約制とアイドルタイム割引。そして「スタッフの定着が悪い店は客も定着しない」——プロフィット・チェーンは、従業員への投資を売上の言葉で説明する道具です。
冒頭の問いに答えます。サービスは無形性・不可分性・変動性・消滅性の4特性でモノと根本的に違い、品質は知覚−期待の5次元(SERVQUAL)で測り、収益は従業員満足を起点とする連鎖(サービス・プロフィット・チェーン)でつながります。これでマーケティングの各論も一巡——経営理論の残りは国際経営・企業の社会性と労働法規です。