契約不適合 — 「欠陥か」ではなく「約束どおりか」で裁きます
納品された機械が思ったより性能が低い——旧法はこれを「隠れた瑕疵(欠陥)があるか」で裁きました。2020年施行の改正は発想を変えます——「契約で約束した内容に適合しているか」。欠陥の有無ではなく、約束との一致が物差しです。
買主の武器が2つから4つに増えたことと、利用規約が契約になる仕組み(定型約款)が試験の的です。
瑕疵担保責任はなぜ契約不適合責任に変わり、定型約款はどんなときに合意とみなされるのでしょうか。
買主の武器は4つ——追完・減額・賠償・解除です
契約不適合責任(562〜564条)——引き渡された目的物が種類・品質・数量について契約の内容に適合しないとき、買主は①追完請求(修補・代替物・不足分の引渡し)②代金減額請求(追完の催告をしても追完されないとき等)③損害賠償請求④解除——の4つを使えます。旧法の瑕疵担保(損害賠償と解除が中心)より、直してもらう・安くしてもらうという現実的な選択肢が正面から認められました。
種類・品質の不適合は、知った時から1年以内にその旨を売主に通知すれば権利が保存されます——旧法の「1年以内に請求」から「通知で足りる」に緩和された点も改正の要です。
定型約款——読まれない規約が契約になる条件です
定型約款(548条の2以下)——不特定多数との画一的な取引のために準備された条項の束(利用規約・保険約款・運送約款)。①定型約款を契約内容とする旨の合意をするか、②準備者があらかじめその旨を相手に表示していれば、個別の条項も読んでいなくても合意したものとみなされます(みなし合意)。
ただし安全弁もあります——相手方の権利を制限し義務を加重する条項で、信義則に反して相手の利益を一方的に害する条項は、みなし合意から除外されます(不当条項の排除)。約款の変更も、相手の利益になる変更か、合理的な変更かで要件が分かれます。
「追完と減額の同時行使」と「請求か通知か」が定番です
定番の誤り肢は「買主は追完請求と代金減額請求を同時に行使できる」——誤り。代金減額は原則として追完の催告をして、追完がないときの二段目の武器です(直してもらうチャンスが先)。
「知った時から1年以内に損害賠償を請求しなければ権利を失う」も旧法型の誤り——現行法は通知で足ります(請求までは不要)。「みなし合意は、どんな条項でも例外なく成立する」も誤り——不当条項は除外されます。
受注側の中小企業にとって、契約不適合責任は「仕様書の精度」の問題です——「約束どおりか」で裁かれる以上、何を約束したかが曖昧なら争いは避けられない。仕様書・検収基準の明文化、通知期間や責任範囲の特約(契約不適合責任は任意規定なので特約で調整可能)——契約書チェックの着眼点が改正で変わりました。ECサイトの利用規約も定型約款の要件(表示・不当条項)で読み直す価値があります。
冒頭の問いに答えます。「欠陥か」から「約束どおりか」への発想転換が契約不適合責任——買主の武器は追完・代金減額・損害賠償・解除の4つで、知った時から1年以内の通知で権利が保存されます。定型約款は合意または事前表示でみなし合意が成立し、不当条項は除外——これで民法5本が完走です。経営法務の残りは独禁法ほかの5本になりました。