意思表示 — 脅された人がいちばん守られます
「本心ではなかった」契約の運命は、本心でなかった理由で変わります——冗談で言った人・グルで仮装した人・勘違いした人・だまされた人・脅された人。
並べてみると保護のグラデーションが見えます——自業自得に近いほど保護は薄く、脅された人がいちばん強く守られる。この序列が試験の的です。
「本心ではなかった」意思表示は、それぞれどんな効果になるのでしょうか。
心裡留保→虚偽表示→錯誤→詐欺→強迫の5段です
心裡留保(93条・冗談)——原則有効。言った本人の自業自得です(相手がウソと知り、または知り得たときは無効)。通謀虚偽表示(94条・グルの仮装売買)——当事者間では無効、ただし事情を知らない善意の第三者には無効を対抗できません。
錯誤(95条・勘違い)——2020年施行の改正で「無効」から取消し可能に変わりました。詐欺(96条)——取消し可能、ただし善意無過失の第三者には対抗できない。強迫(96条)——取消し可能で、第三者にも対抗できます——脅された人には落ち度がないからです。
詐欺と強迫の差——第三者への対抗が分かれ目です
だまされた人と脅された人はどちらも取り消せますが、取消し前に現れた第三者との関係で差が出ます——詐欺の被害者は「だまされた落ち度」を考慮され、善意無過失の第三者に取消しを対抗できない。強迫の被害者には落ち度がなく、第三者が善意でも取消しを対抗できます。
錯誤の改正は2020年施行(2017年成立)の債権法改正の代表論点です——旧法の「無効」(誰でもいつでも主張できてしまう)から、表意者を守るための取消し(本人側だけが主張でき、期間制限あり)へ整理されました。「錯誤は無効」は旧法の記述——現行法では誤りです。
「錯誤は無効」と、詐欺・強迫の対抗の入れ替えが定番です
最頻出の誤り肢は「錯誤による意思表示は無効である」——旧法の知識で作られた改変肢です。現行民法では取消し可能——2020年施行の改正で変わった点そのものが的になります。
詐欺と強迫の第三者対抗の入れ替えも定番——「強迫による取消しは善意の第三者に対抗できない」(誤り——対抗できるのが強迫。できないのは詐欺の側)。「落ち度のない強迫被害者が最強」の序列で固定してください。
取引先との「言った言わない」トラブルで、意思表示の瑕疵が正面から使える場面は実は多くありません——立証が難しいからです。実務の教訓はむしろ予防側にあります——重要な条件は書面・メールに残す、相手の誤解に気づいたら放置しない(悪意擬制の芽)、価格や数量の入力ミスは即時に訂正連絡。民法の枠組みは「揉めたときに何が争点になるか」の地図として携えます。
冒頭の問いに答えます。心裡留保は原則有効・虚偽表示は無効(善意の第三者に対抗不可)・錯誤は2020年改正で取消しに・詐欺は取消し可能だが善意無過失の第三者に対抗不可・強迫は第三者にも対抗できる——落ち度が小さいほど強く守られる序列です。次は権利の賞味期限——時効へ。