配当の規律 — 配れる範囲を決め、10分の1を貯金します
株主が「儲けを全部配当しろ」と言い、経営者がそれに従ったら——会社の中身が空になり、損をするのはお金を貸している債権者です。株主は有限責任——会社が潰れても出資額しか失わない。だから配ってよい範囲に法律の枠が要るのです。
その枠が分配可能額、そして配るたびに積む貯金が準備金——10分の1と4分の1という2つの分数が試験の的です。
会社はなぜ儲けの全額を配当できず、準備金を積み立てる義務があるのでしょうか。
債権者のための「配当の上限」と「強制貯金」です
剰余金の配当は分配可能額の範囲内でしか行えません(461条)——大づかみには、資産から負債・資本金・準備金を引いた「配っても債権者を害さない余裕」の部分だけが配当の原資です(この規律に反する配当が違法配当(タコ配当))。
さらに配当のたびに配当額の10分の1を準備金(資本準備金または利益準備金)として積み立てます——準備金の合計が資本金の4分の1に達するまで続く強制貯金です。会社が傾いたときのクッションを、配るたびに少しずつ厚くする設計です。
決議機関と中間配当——原則総会・例外取締役会です
配当の決議は原則として株主総会(普通決議)です。例外として、取締役会設置会社は定款の定めにより中間配当を取締役会決議で行えます——年に何度も総会を開かずに機動的に配る道です。
W27の損得原則との接続も見えます——配当は株主に「配る」行為ですが、守るべき相手が株主ではなく債権者に変わる。会社法の規律は「その操作で誰が損しうるか」を探すと、決議機関も積立義務も理屈で復元できます。
10分の1と4分の1の分数の入れ替えが定番です
定番の誤り肢は分数の改変——「配当額の5分の1を積み立てる」(誤り——10分の1)・「準備金が資本金の3分の1に達するまで」(誤り——4分の1)。「配るたび1割・貯金はカルテット(4分の1)まで」のリズムで固定してください。
「分配可能額を超える配当も、株主全員の同意があれば適法」も誤り——分配可能額の規律は債権者保護のためなので、株主の同意では外せません。
同族会社の「社長への配当」は、役員報酬・貸付と並ぶお金の出口ですが、分配可能額の検算を飛ばした配当は違法配当のリスクを踏みます——B/Sの純資産の中身(資本金・準備金・剰余金の区分)を見ずに「現金があるから配れる」と考える経営者は少なくない。決算書の純資産の部を配当の物差しとして読み替えて見せるのは、財務・会計と法務をまたぐ診断士らしい仕事です。
冒頭の問いに答えます。株主有限責任の裏側で債権者を守るため、配当は分配可能額の範囲内に限られ、配当のたびに10分の1を準備金として(合計が資本金の4分の1に達するまで)積み立てます。決議は原則総会・中間配当は定款で取締役会も可。次は会社そのものを組み替える——組織再編の種類へ。