附款 — 「許可します。ただし——」の続きにも、型と限界があります
「営業を許可します。ただし、閉店時刻は22時とすること」。行政の許可には、本体にこうした付け足しが伴うことがよくあります。講学上これを附款と呼びます。本体注文へのオプションのようなもので、オプションには型がいくつかあり、付けてよい範囲にも、破ったときの効果にも決まりがあります。
附款にはどんな型があり、どこまで付けられて、破るとどうなるのでしょうか。
発動スイッチ・カレンダー・別口の宿題
主要な型は4つです。効力の発生・消滅を不確実な将来の事実にかからせる条件(発動スイッチ。成就するか分からない)。確実に到来する事実にかからせる期限(カレンダー)。本体とは別に作為・不作為の義務を課す負担(別口の宿題)。そして後から撤回する可能性を予告しておく撤回権の留保です。
試験の急所は条件と負担の見分けです。「◯◯したら効力発生」は条件、「効力はもう発生していて、◯◯する義務が付いている」は負担。冒頭の閉店時刻は負担です。
付けられる範囲にも、争い方にも枠があります
附款は無制限に付けられるわけではありません。法律が附款を許容している場合か、行政庁に裁量が認められる場合に付すことができ、内容は本体の目的と関係のない義務を課すものであってはならず(目的拘束)、必要な限度を超えてもなりません(比例原則)。
負担違反の効果も整理しておきます。負担に違反しても、本体の効力が当然に失われるわけではありません。行政庁の側の対応手段になるのは、義務の履行を求めることや、撤回事由とすることです。
では附款だけを裁判で争えるか。附款が本体と可分(切り離しても本体が成り立つ)なら附款だけの取消しを求める余地があり、本体の重要な要素で不可分なら処分全体を争うことになる、というのが基本の枠組みです(通説)。
「負担違反=本体も自動失効」が定番の誤りです
第一の手口は効果の直結です。「負担に違反したときは、本体の行政行為は当然にその効力を失う」は誤りです。負担は別口の宿題で、破っても本体は直ちに消えません(撤回等の手続の理由になるだけです)。
第二の手口は条件との入れ替えです。解除条件付きの処分なら条件成就で効力が消えますが、それは条件の効果です。負担と条件の効果を入れ替えた肢に注意してください。
第三の手口は自由化です。「行政庁は、いかなる行政行為にも自由に附款を付すことができる」は誤りです。法律の許容または裁量の存在が前提で、目的拘束・比例原則の枠があります。
許認可の通知書が届いたら、本体の可否だけでなく付いてきたものを精読するのが実務です。それは条件か、負担か、撤回権の留保か。負担なら履行管理のチェックリストに落とし、重すぎる・目的と無関係と感じる附款なら、争う余地(可分性)の検討材料にします。「ただし書きまで読む」習慣が、依頼者の許認可を守ります。
答えです。型は条件・期限・負担・撤回権の留保、付けられるのは法律の許容か裁量の枠内、そして負担違反でも本体は直ちに失効しません。最後のユニットは、その「裁量」そのものに裁判所がどこまで踏み込めるかです。