被告適格と出訴期間 — 宛名と締切を最初に確定させます
取消訴訟は、かつて「処分をした行政庁」を被告に選ぶ決まりでした。似た名前の役所や部局の中から正しい一つを特定する必要があり、ここでつまずくと、中身の審理に入る前に時間を失います。使いにくさの一因とされ、2004年(平成16年)の改正で宛先の決まりは改められました。
いまの決まりは、1つの宛名と2つの数字で覚えられます。この5分で、訴えの「宛先」と「締切」を確定させます。
取消訴訟は、誰を被告として、いつまでに起こせばよいのでしょうか。
宛名は「窓口」ではなく「会社」に書きます
請求書を送るときのことを考えてみてください。仕事をしたのは営業担当者でも、請求書の宛名は会社に書きます。支払いの責任を負うのは、担当者個人ではなく会社だからです。取消訴訟の被告も同じ形です。処分をしたのは行政庁(窓口)でも、訴える相手はその行政庁が所属する国や公共団体(会社)です。
締切は、食品の表示に似た二重構えです。「開封後はお早めに」にあたる知った日から6か月と、「製造から◯日」にあたる処分の日から1年。どちらか先に来た方で締め切られます。
11条が宛名を、14条が締切を決めています
まず宛名です。11条1項の読みどころは「所属する」の一語です。
…取消訴訟は、…当該処分をした行政庁の所属する国又は公共団体を被告として提起しなければならない。(行訴法11条1項)
県知事の処分なら被告は県、税務署長の処分なら被告は国です。どの行政庁が処分をしたかは、訴状に記載して明らかにします(同4項)。なお、行政庁が国・公共団体に所属しない例外的な場合には、その行政庁自身が被告になります(同2項)。
次に締切です。14条は2本のタイマーを並走させます。処分があったことを知った日から6か月(1項)、知らなくても処分の日から1年(2項)。どちらにも「正当な理由があるときは、この限りでない」という但書が付いています。審査請求をした場合には、起点が裁決に切り替わり、裁決があったことを知った日から6か月・裁決の日から1年になります(3項)。
そして、この宛名と締切は、受け取る側が自力で調べなくてよい仕組みになっています。行政庁は処分の際、被告とすべき者と出訴期間を書面で教えなければなりません(46条・教示。処分を口頭でする場合は除きます)。
「処分庁を被告に」は、原則としては誤りです
出題者がまず狙うのは主体のすり替えです。「取消訴訟は処分をした行政庁を被告として提起しなければならない」という肢は、原則の形としては誤りです。被告は行政庁の所属する国・公共団体です(11条1項)。ただし所属しない場合の例外(2項)があるので、「いかなる場合も国・公共団体が被告」と断定する肢も誤りになります。
次に数字の入れ替えです。審査請求の期限(3か月・行政不服審査法18条1項)と、取消訴訟の6か月を入れ替える肢が定番です。裁判は6か月、審査請求は3か月です。
最後に断定語です。「6か月を経過したときは、一切提起することができない」は誤りです。14条には「正当な理由」の但書があります。
「先生、もう遅いでしょうか」という相談は、処分通知書を挟んで始まります。最初に見るのは通知書の教示欄です。被告とすべき者と出訴期間は、行政庁自身が書面で教える義務を負っています(46条)。日付を確定し、審査請求(3か月)と取消訴訟(6か月)の両方の残り時間を示すところまでが初動です。取消訴訟の代理は弁護士の業務なので、期限を確定させたうえで速やかにつなぎます。
冒頭の問いに答えます。被告は処分をした行政庁が所属する国・公共団体、締切は知った日から6か月(遅くとも処分の日から1年)です。次のユニットでは、訴えを起こしたあと、処分そのものは止まるのかという問題を扱います。