引力演習・救済編 — 訴えの利益と国賠の「決め手」を差し替えられても
訴えの利益と国家賠償は、似た事案で結論が割れる判例が密集する地帯です。つまり「名前→結論」の直結記憶がいちばん誤爆する場所でもあります。ここでは、決め手の違いだけで結論が反転する組を連続で判定します。
決め手→結論の持ち方は、似た事案の連続射撃に耐えるでしょうか。
「同じに見える事案」ほど、決め手の一点だけが違います
工事完了なら消える(建築確認)のに、工事完了でも残る(土地改良)。期日が過ぎたら消える(皇居外苑)のに、期間が過ぎても残る(優良運転者)。並べると矛盾に見えますが、決め手——その処分が後に残す法的な意味——が違うだけです。
反転ペアを三組、決め手で固定します
工事完了ペア。建築確認は「工事を始めてよい」という役目を工事完了とともに終える(最判昭59.10.26・開発許可も同型=最判平5.9.10)。土地改良事業の認可は換地処分など後続手続の法的な土台として生き続ける(最判平4.1.24)。決め手は工事の有無ではなく、処分の役目が続いているかです。
期間経過ペア。皇居外苑の使用不許可は、期日の経過で回復すべき利益が消えた(最大判昭28.12.23)。運転免許の更新で「一般」とされた人は、優良運転者の記載を求める法律上の利益が残る(最判平21.2.27)。決め手は時間ではなく、取消しで回復できる法律上の利益の有無です。
国賠の入口ペア。処分の違法を理由とする国賠請求に、取消判決は要りません(最判平22.6.3)。一方、公務員個人への直接請求はできません(最判昭30.4.19)。「国賠は使いにくい」でも「何でもできる」でもなく、入口ごとに開閉が決まっています。
決め手を丸めて「例外もある」とだけ覚えるのが、次の敗因です
「工事完了でも例外はある」という粒度の記憶は、本番では役に立ちません。どの決め手のときに例外側へ倒れるのかまで言えて、初めて判定できます。ドリルで間違えたら、「決め手は何だったか」を一言で言い直してから次へ進んでください。
「もう工事が終わってしまったんですが」という相談で、諦めの空気を疑ってかかれるのがこの訓練の成果です。処分が後続手続の土台として生きていないか——土地改良型の構造を探す目は、期限が絶望的に見える相談の突破口になります。
決め手は処分が後続に残すもの。ペアで反転を体に入れたら、最終ユニット(原則側の有名判例)で引力の逆流を締めます。