引力演習・原則編 — 「有名なのに原則側」の判例で逆流を止める
「有名判例=例外を作った判例」という思い込みは、判例の引力の最後の変奏です。実際には、原則を確認したからこそ有名になった判例がたくさんあります。この最終ユニットでは、原則側のスターたちを並べて、引力の逆流——「有名だから例外側だろう」という反射——を止めます。
「有名なのに原則側」の判例を、例外側と混ぜずに持てるでしょうか。
原則側の判例は「本線を敷いた側」として覚えます
鉄道にたとえると、例外を開いた判例が分岐器だとすれば、原則側の判例は本線の線路を敷いた判例です。用途地域の指定に処分性なし(本線)、立法不作為の国賠は原則否定(本線)。本線が確定しているからこそ、分岐の狭さも際立ちます。
原則側のスターを四人、確認します
用途地域の指定(最判昭57.4.22)。処分性なし。一般的・抽象的な制限にとどまるという、処分性の本線を確定した判例です。計画側で分岐を開けたのは土地区画整理事業計画の判例変更(最大判平20.9.10)——本線と分岐をセットで持ちます。
ごみ焼却場の設置行為(最判昭39.10.29)。処分性なし。事実行為は本線の外、という基本の線路です。
在宅投票制度廃止(最判昭60.11.21)。立法不作為の国賠は原則否定。分岐を開けたのが在外邦人選挙権(最大判平17.9.14)で、分岐の狭さ(選挙権の根幹・長期の制限)は本線があってこそ意味を持ちます。
宅建業者の監督懈怠(最判平元.11.24)。規制権限の不行使は原則として違法にならない(著しく不合理な場合に限る)ことを、否定例の側から確認した判例です。
本線の判例を「古いから変更されたかも」と疑い出すと、きりがありません
判例変更は実際にあります(区画整理・最大判平20.9.10)。しかし、変更は例外中の例外です。「昭和の判例だから今は違うかも」という不安で本線側の判例を切ると、正答率はかえって下がります。判例変更は変更があったと明示的に学んだものだけ——それ以外の本線は現役として扱うのが、試験上の正しい賭け方です。
依頼者への「できません」の説明は、実は本線側の判例の出番です。「この類型は最高裁が争えないと確定させています」と原則側の判例を引けることは、無駄な争訟から依頼者を守る専門性です。分岐の判例だけでなく本線の判例を持っていることが、助言の誠実さを支えます。
判例は本線(原則)と分岐(例外)のセットで持つ。これで誤答心理シリーズは一巡です——こんがらがりには錨を、正義感には裏切りリストを、フランケン肢には三点検査を、判例には決め手と本線を。4つの武器を、ドリルの周回で反射に変えてください。