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行政法 / 国家賠償法・損失補償国家
国家賠償法・損失補償 3/4 / 約5分

国賠2条 — 「予算がなかった」は言い訳になりません

国道沿いの崖から岩が落ち、走っていた車を直撃して運転者が亡くなりました。管理者の県は、落石を予測して防ぐ注意義務は尽くしており、全ての危険箇所に防護柵を設ける予算もない、と主張しました。最高裁はどちらの言い分も通しませんでした(高知落石事件・最判昭45.8.20)。

この5分の問い

公の施設の欠陥による損害は、誰のミスも立証できなくても賠償されるのでしょうか。

直感でつかむ

問われるのは人の注意ではなく、モノの安全性です

1条が「人のミス」を問うのに対し、2条は視線をモノに向けます。道路そのものが通常有すべき安全性を備えていたか。備えていなければ、管理者がどれだけ気をつけていたかは関係ありません。これが無過失責任です。

2条の軸瑕疵=通常有すべき安全性を欠くこと。管理者の過失は不要。予算不足は免罪符にならない。

ただし無過失責任は無限責任ではありません。安全性は「通常の使い方」を基準に測ります。ここが限界線です。

厳密に見る

「通常」の二文字が、責任の入口と出口を両方決めます

道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。(国家賠償法2条1項)

入口から確認します。公の営造物は道路・河川・公園・学校などの不動産に限らず、公用車や警察犬のような動産も含みます。瑕疵は「通常有すべき安全性を欠くこと」で、高知落石事件は、過失の立証がなくても、予算の制約を主張しても、責任を免れないと明言しました。

出口が「通常の用法」です。公園のテニスコートの審判台に幼児が後ろから登り、倒れて亡くなった事故で、最高裁は通常の用法に即しない行動の結果については設置管理者は責任を負わないとしました(最判平5.3.30)。河川も基準が調整されます。未改修河川は財政的・技術的制約をふまえた過渡的な安全性で足りるとされました(大東水害・最判昭59.1.26)。

もう1つ、支払側の頭数です。営造物の管理者と費用負担者が異なるときは、費用を負担する者も賠償責任を負います(3条1項)。被害者はどちらにも請求でき、負担の割り付けは内部の求償で処理されます(同2項)。

結論が反転する分かれ目
否定
未改修河川(大東水害・最判昭59.1.26)
財政的・技術的制約をふまえた過渡的な安全性で判断
要求あり
改修済河川(多摩川水害・最判平2.12.13)
改修計画が想定した規模の洪水に対応する安全性が必要
分かれ目 同じ「河川」でも、改修の前後で要求水準が変わる。
ここで間違える

「2条にも過失が必要」が最頻出、「無限責任」への誇張が次点です

第一の手口は1条との混同です。「2条の責任が成立するには、管理者の故意・過失が必要である」は誤りです。2条は無過失責任です。

第二の手口は誇張です。「営造物で事故が起きれば、管理者は常に責任を負う」は誤りです。通常の用法に即しない行動による事故(テニス審判台)や、未改修河川の水害(大東水害)では否定されています。

第三の手口は範囲です。「公の営造物は不動産に限られる」は誤りです。動産も含みます。

第四の手口は支払側です。「費用負担者には賠償を請求できない」は誤りです(3条1項)。

実務では

「市道の穴で転んでけがをした」という身近な相談が、まさに2条の世界です。管理者のミスの立証は要らず、道路が通常の安全性を欠いていたかが焦点になると説明できると、依頼者は立証の負担を正しく見積もれます。現場写真・穴の寸法・過去の苦情記録など、瑕疵を裏づける資料の集め方を助言するのが初動の実務です。

確かめる — 予想してから答え合わせ
この5分のまとめ

答えです。営造物が通常有すべき安全性を欠いていれば、誰の過失も立証せずに賠償されます。ただし通常の用法の外側は守備範囲外です。最後のユニットは、違法ですらない適法な行政活動が生む犠牲——損失補償の世界です。