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行政法 / 国家賠償法・損失補償国家
国家賠償法・損失補償 2/4 / 約5分

免責と求償 — 窓口は国に一本化、精算は内部で行います

役所のミスで損害を受けたら、ミスをした担当者本人にも責任を取らせたい。自然な感情です。実際に、公務員個人を相手取って民法の不法行為責任を追及した人がいました。最高裁の答えは明快でした。国家賠償法が適用される場面では、公務員個人は被害者に対して責任を負わない(最判昭30.4.19)。

この5分の問い

賠償の請求先はなぜ国に一本化され、ミスをした公務員は無傷なのでしょうか。

直感でつかむ

会社が払って、社内で精算します

取引先が担当者個人に損害賠償を求めない構図と同じです。支払いの窓口は資力のある組織に一本化するのが、被害者にとっても確実です。そのうえで、組織の中では悪質な担当者に負担を回します。これが求償です。

責任の軸被害者への窓口は国・公共団体のみ。求償できるのは故意または重大な過失のときだけ。

つまり公務員は「無傷」ではありません。ただし、うっかりミス(軽過失)まで精算の対象にすると、公務員が萎縮して仕事が回らなくなります。求償のハードルが一段高いのは、そのためです。

厳密に見る

1条2項の「重大な」の三文字が、民法との分かれ目です

前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。(国家賠償法1条2項)

整理すると三層です。第一に、被害者から公務員個人への直接請求はできません(最判昭30.4.19。民法709条の責任も負いません)。第二に、被害者から国・公共団体への請求は1条1項の要件(前ユニット)で決まります。第三に、支払った国・公共団体から公務員への求償は、故意または重過失がある場合に限られます。

民法の使用者責任(715条)では、使用者から被用者への求償に重過失までは要求されていません。国家賠償法があえて「重大な」と書いたのは、公務の萎縮を防ぐ趣旨です。択一はこの一語の違いを突いてきます。

結論が反転する分かれ目
故意・重過失のみ
国賠法1条2項の求償
軽過失では求償不可。公務の萎縮防止
重過失は不要
民法715条の使用者の求償
民法には「重大な」の限定がない
分かれ目 「重大な」の三文字があるのは国賠法側。
ここで間違える

「本人も訴えられる」「軽過失でも求償」——方向と重さの手口です

第一の手口は窓口です。「被害者は、国家賠償請求とあわせて公務員個人に対しても損害賠償を請求できる」は誤りです。個人責任は否定されています。

第二の手口は重さです。「公務員に過失があれば、国は求償権を行使できる」は誤りです。軽過失では求償できません。故意または重過失です。

第三の手口は向きです。求償は国・公共団体から公務員への方向です。「公務員が国に求償する」といった逆向きの記述は誤りです。

実務では

「担当者を訴えてやりたい」という強い感情を受け止めたうえで、請求の相手方は国・公共団体になると説明できるのがプロです。感情の行き場と法律構成は別に設計する。相手方を間違えた内容証明は時間を失うだけなので、初動の整理でこの一本化を必ず伝えます。

確かめる — 予想してから答え合わせ
この5分のまとめ

答えです。窓口の一本化は被害者の確実な救済のため、求償の故意・重過失限定は公務の萎縮防止のためです。ここまでが「人のミス」の世界でした。次は、誰のミスでなくても賠償される「モノの欠陥」の世界です。