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内閣総理大臣は「誰が指名し、誰が任命するか」。政令はどこまで作れるか。国会(前の章)の議決を受けて動く行政権の主体を、主体すり替えのトラップごと体得する章。裁判所は次の章。
内閣総理大臣は、国会が任命し天皇が指名するのか、それとも逆か? 政令に罰則を設けるには何が必要か?
行政書士は、内閣が定める政令・省令を根拠に許認可申請の代理を行う。「どの機関がどの権限を持つか」「政令で罰則を設けるには何が必要か」を熟知する必要がある。財政民主主義(83〜91条)も、補助金・国費支出に関与する業務で直接関連する。
内閣は国会に対して連帯して責任を負う(66条3項)。これが議院内閣制の核心。
73条は内閣の主要な権限を列挙している。すべて「内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ」として定める。
| 号 | 権限 | 補足 |
|---|---|---|
| 1号 | 一般行政事務の執行 | 法律の誠実な執行・国務の総理 |
| 2号 | 外交関係の処理 | 条約は3号(国会の承認が必要)と区別する |
| 3号 | 条約の締結 | 事前(原則)または事後に国会の承認を経ること |
| 4号 | 官吏の事務管掌・任免 | 法律の定める基準に従い |
| 5号 | 予算の作成・国会への提出 | 作成は内閣・審議・議決は国会(60条) |
| 6号 | 政令の制定 | 憲法・法律の規定を実施するため。罰則は法律の委任がある場合のみ |
| 7号 | 大赦等の決定 | 大赦・特赦・減刑・刑の執行免除・復権の決定(天皇の認証行為と区別) |
「外交関係の処理」(2号)は外交一般(交渉・接受等)。「条約の締結」(3号)は国際法上の条約(国会承認が必要)。試験では「条約の締結は国会が行う」→ 誤り(内閣が締結、国会は承認)という出題が多い。
内閣総理大臣は内閣の首長(66条1項)。明治憲法下の「同輩中の首席」から、日本国憲法では他の国務大臣より一段上の地位に引き上げられた。任命・指名・任免・訴追同意・指揮監督という強い権限が、この「首長」性を支える。ここは「誰が」やるのかの主体すり替えが最頻出の論点。
| 権限 | 条文 | 核心(誰が・何を) |
|---|---|---|
| 総理大臣の任命 | 6条1項 | 天皇が国会の指名に基づいて任命(総理自身の権限ではなく、天皇の国事行為) |
| 総理大臣の指名 | 67条 | 国会が国会議員の中から議決で指名。他のすべての案件に先立って行う |
| 国務大臣の任免 | 68条 | 内閣総理大臣が任命(過半数は国会議員)。任意に罷免できる(閣議も不要) |
| 国務大臣の訴追同意 | 75条 | 国務大臣は在任中、総理大臣の同意がなければ訴追されない。訴追の権利自体は害されない |
| 行政各部の指揮監督 | 72条 | 総理大臣は内閣を代表して議案を国会に提出し、行政各部を指揮監督する |
指名するのは国会、任命するのは天皇。総理大臣は「国会が指名 → 天皇が任命」という2段階で選ばれる(67条→6条1項)。一方、国務大臣は「総理大臣が任命 → 天皇が認証」(68条→7条5号)。「総理大臣を任命するのは国会」「国務大臣を任命するのは天皇」はいずれも誤り。誰が指名し・誰が任命し・誰が認証するかを主体ごとに分けて固定する。
内閣総理大臣の職務権限が争われた。最高裁は、閣議にかけて決定した方針が存在しない場合でも、内閣総理大臣は、内閣の明示の意思に反しない限り、行政各部に対して指導・助言等の指示を与える権限を有すると判示(傍論)。72条の指揮監督権を広く捉えた重要判例。
行政書士は法律・政令・省令・条例を根拠に業務を行う。どの法形式がどの機関により作られ、互いにどう優劣するかは、許認可の根拠を読み解く土台になる。
| 形式 | 制定者 | ポイント |
|---|---|---|
| 憲法 | —(最高法規98条) | これに反する法律・命令・詔勅等は効力を有しない |
| 法律 | 国会(41条) | 唯一の立法機関である国会が制定 |
| 政令 | 内閣(73条6号) | 憲法・法律を実施するための命令。罰則は法律の委任がある場合のみ(同号但書) |
| 府省令 | 各大臣(内閣府令・省令) | 政令の下位に位置する行政機関の命令 |
委任命令:法律の委任に基づき、国民の権利義務の内容そのものを定める命令。罰則や新たな義務を政令で定めるには、法律の個別・具体的な委任が必要(白紙委任は禁止)。
執行命令:法律を執行するための手続・様式など細目を定める命令。新たな権利義務は作れず、法律の一般的な授権で足りる。
地方公共団体は「法律の範囲内」で条例を制定できる(94条)。国の法令に反する条例は無効。条例が罰則を設けるにも法律による授権が必要だが、条例は住民代表機関である議会が定める民主的立法なので、法律の授権が相当程度具体的であれば足り、政令のような事項ごとの個別委任までは要しない(徳島市公安条例事件・最大判昭50.9.10、地方自治法14条3項)。政令の罰則が個別委任を要するのと対比して押さえる。
解散は7条3号(天皇の国事行為)と69条(不信任決議可決後)の2ルートがある。実際の解散のほとんどは7条解散(内閣の助言と承認)による。
憲法66条3項 内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。
「内閣総理大臣は天皇が指名し、国会が任命する」→ 誤り。指名は国会(67条)、任命は天皇(6条1項)。主体が逆。国務大臣は総理大臣が任命(68条)である点も混ぜてくる。
「内閣は、政令に罰則を設ける場合、法律の委任がなくても独自に罰則を規定することができる」→ 誤り。政令に罰則を設けるには法律の委任が必要(73条6号但書)。委任なき罰則付政令は違憲。条例は住民代表機関の民主的立法なので相当程度具体的な授権で足りる点と対比する。
内閣の権限に関する次の記述のうち、憲法の規定に照らして妥当なものはどれか。
内閣総理大臣:指名は国会(67条)・任命は天皇(6条1項)、国務大臣は総理が任命し任意に罷免(68条)・訴追同意(75条)・指揮監督(72条)。法令序列:憲法>法律>政令>府省令、政令の罰則は法律の委任が必要(73条6号但書)、条例は法律の範囲内(94条)。
内閣総理大臣の指名は〔 ? 〕、任命は〔 ? 〕。国務大臣の任免は〔 ? 〕。内閣が政令で罰則を定めるには〔 ? 〕が必要(73条6号)。
最高裁の構成・違憲審査制・統治行為論・部分社会の法理を扱う。