内閣総理大臣の権限 — 推薦するのは会議、辞令を渡すのは本部です
新しい内閣総理大臣が誕生するニュースでは、「国会で指名され、天皇が任命する」という2段階の手続が必ず登場します。この「誰が指名し、誰が任命するか」の主体を入れ替える出題が、統治分野で最も繰り返される手口の1つです。
内閣総理大臣は誰が指名し、誰が任命するのでしょうか。国務大臣の任免は誰の権限でしょうか。
推薦するのは会議、辞令を渡すのは本部です
会社にたとえると、新しい代表者を推薦するのは会議(国会)で、正式な辞令を渡すのは本部(天皇)です。内閣総理大臣の指名は国会が国会議員の中から議決し(67条)、任命は天皇が国会の指名に基づいて行います(6条1項、天皇の国事行為)。
この2段階を「天皇が指名し、国会が任命する」と逆にする肢が、統治分野で最も繰り返される誤りです。
総理大臣は、内閣の首長として強い権限を持ちます
内閣総理大臣は「内閣の首長」です(66条1項)。この首長性を支えるのが、任命・指名・任免・訴追同意・指揮監督という一連の強い権限です。
国務大臣の任免は内閣総理大臣が行います(68条)。過半数は国会議員でなければなりませんが、任命自体に閣議は不要で、総理大臣は任意に罷免できます。国務大臣は、在任中は内閣総理大臣の同意なしに訴追されません(75条本文)。ただし、これによって訴追の権利そのものが害されるわけではありません(75条ただし書)。
行政各部への指揮監督は72条に基づきます。ロッキード事件丸紅ルート(最大判平7.2.22)は、内閣総理大臣が閣議にかけて決定した方針が存在しない場合でも、内閣の明示の意思に反しない限り、行政各部に対し指導・助言等の指示を与える権限を有するとしました(傍論)。
「指名」と「任命」の主体を逆にする肢が最頻出です
第一の手口は主体の入れ替えです。「内閣総理大臣は天皇が指名し、国会が任命する」は誤りです。指名は国会、任命は天皇で、主体が逆です。
第二の手口は罷免手続の水増しです。「内閣総理大臣は、国務大臣を罷免するには閣議の決定を要する」は誤りです。総理大臣は任意に罷免でき、閣議は不要です。
第三の手口は訴追同意の効果の拡大です。「国務大臣が在任中に訴追されなかった行為は、退任後も訴追されない」は誤りです。同意がないのは在任中の訴追だけで、訴追の権利自体は害されません。
統治分野は行政書士の実務業務と直接は結びつきませんが、行政書士試験の基礎法学・一般知識と並ぶ配点科目として得点源にする必要があります。「誰が」「何を」「どういう手続で」という主体と手続のペアを条文の言葉のまま覚えることが、この分野の得点を安定させる唯一の方法です。
答えです。内閣総理大臣は国会が指名し、天皇が任命します。国務大臣は総理大臣が任免し、在任中は総理大臣の同意なしに訴追されません。次は、この総理大臣・内閣が作る命令の世界——法令の形式と序列です。