商圏分析 — 客は「広くて近い店」に吸い寄せられます
近所にスーパーが3軒——大きくて近いA店、小さくて遠いB店、中くらいのC店。あなたがどの店に行くかは、気分のようでいて、実はかなりの精度で確率として計算できます。
効くのは店の大きさと距離——そして距離は2乗で効く。都市間のマクロを扱うライリー、個別店舗のミクロを扱うハフ——2つのモデルの使い分けが試験の的です。
客がどの店に行く確率は、何の要素でどう決まるのでしょうか。
引力は「大きさに比例・距離の2乗に反比例」です
ライリーの小売引力の法則——2つの都市が中間の地域から吸引する購買力は、人口に比例(1乗)し、距離の2乗に反比例する。万有引力に似た形の、都市間のマクロな法則です(コンバースはこれを変形して、2都市の商圏の分岐点を求める式にしました)。
ハフモデル——消費者が個別の店舗を選ぶ確率を、売場面積÷距離^λの比率で表します(原式の分母は距離ではなく移動時間——試験では距離で簡略化されるのが通例です。λは距離への敏感さ。買回品なら遠くても行くのでλ小、最寄品ならλ大)。複数店舗の選択を確率として扱えるのが特徴で、新規出店のシミュレーションに使われます。
クリスタラーの中心地理論と立地評価の目——理論の土台です
クリスタラーの中心地理論——都市(中心地)は財・サービスの到達範囲に応じて階層をなし、六角形の商圏が規則的に並ぶという古典理論です。高次の財(百貨店・専門病院)ほど広い商圏を要し、大きな中心地にしか立地できない——「どの規模の店がどの規模の町に成り立つか」の理屈を与えます。
実務の立地評価では、商圏人口・アクセシビリティ(来やすさ)・視認性(見つけやすさ)、そして集積効果(同業・補完業種が集まることで商圏全体が広がる——飲食店街や家電量販の並びが成り立つ理由)を重ねて診ます。
人口と距離の乗数の入れ替えが定番です
定番の誤り肢は乗数の入れ替え——「ライリーの法則では、吸引力は人口の2乗に比例し、距離に反比例する」(誤り——人口は1乗、距離が2乗)。「遠さは2倍効く」と覚えてください。
モデルの適用対象も的——都市間のライリー・個別店舗のハフ。「ハフモデルは2都市間の購買力の分岐点を求める」(誤り——それはコンバースの修正モデル)のような付け替えが典型です。
出店相談で「駅前だから大丈夫」は禁物です。ハフモデルの発想——競合の売場面積と距離を地図に落とし、自店の吸引確率を粗くでも見積もる——だけで、「大型店の商圏の中に小型店で切り込む」無謀さが数字になります。逆に、λの大きい最寄品業態なら「大型店より1本近い」立地が武器になる——距離の2乗の意味を、提案の言葉に翻訳できるのが診断士です。
冒頭の問いに答えます。客の吸引は「大きさに比例・距離の2乗に反比例」——都市間のマクロはライリー(人口1乗×距離2乗)、個別店舗のミクロはハフ(売場面積÷距離^λ)、分岐点はコンバース、階層の理屈はクリスタラーです。店に来てもらったら、次は店内の科学——店舗設計とVMDへ。