IE — 「この作業は何分が普通か」を、測って決めます
コンビニのレジ打ちをストップウォッチで測ったら45秒でした。では「レジ打ちの標準は45秒」でよいか——よくありません。人は疲れるし、レシート用紙も切れる。余裕を乗せた時間が、現実に成り立つ標準です。
作業を測り、標準を決め、ムダを見つける——製造現場の科学、IE(インダストリアル・エンジニアリング)の道具箱です。
「この作業は何分が普通か」は、どう測定し、どう算出するのでしょうか。
標準時間=正味時間×(1+余裕率)です
時間研究——作業をストップウォッチ等で直接測定し(正味時間)、疲労・生理・作業の中断などの余裕を乗せて標準時間を決めます。式は標準時間=正味時間×(1+余裕率)——正味45秒・余裕率15%なら45×1.15=51.75秒です。
張り付いて測る代わりに、ランダムな時刻に瞬間観測して「作業中か・手待ちか」の比率を統計的に推定するのがワークサンプリング(稼働分析)——長時間・多人数の実態把握に向きます。
動作研究とPTS法——「測らずに決める」道具まで揃えます
動作研究(ギルブレス)——作業をサーブリッグと呼ばれる18種類の基本動作要素に分解し、ムダな動作を除いて最良の方法を設計します。「探す」「選ぶ」のような動作単位まで分解するのが特徴です。
PTS法(代表例=MTM法)——あらかじめ基本動作ごとに決められた時間値を積み上げて標準時間を算出します。実測が要らないので、まだ試作品しかない段階でも標準時間が出せる——時間研究(実測)との最大の違いです。
「PTS法は実測が必要」と、連続と瞬間の取り違えが定番です
定番の誤り肢は「PTS法は、実際の作業をストップウォッチで測定して標準時間を求める手法である」——誤り。実測するのは時間研究で、PTS法は既定の時間値の積み上げ——だから試作前でも算出できるのが強みです。
ワークサンプリングと時間研究の観測方法も的——連続して張り付くのが時間研究、ランダムな瞬間観測がワークサンプリング。「ワークサンプリングは連続観測」とする肢は誤りです。なお余裕率を「標準時間に占める割合」で定義する内掛け法では標準時間=正味時間÷(1−余裕率)となり、同じ作業でも余裕率の数値が変わる——外掛けと内掛けの区別も出題されます。
「人によって作業時間がバラバラ」という現場の第一歩は、標準時間づくりです。ベテランの正味時間に余裕率を乗せた標準があれば、見積もりの根拠・教育の目標・改善の物差しが一度に手に入る。ワークサンプリングは設備投資ゼロでできる実態調査——1日数回の巡回観測だけで「手待ちが3割」という事実が数字になり、レイアウト改善の説得材料になります。
冒頭の問いに答えます。標準時間=正味時間×(1+余裕率)——実測の時間研究、瞬間観測のワークサンプリング、既定値積み上げのPTS法(試作前でも可)、動作分解のサーブリッグ(ギルブレス)が道具箱です。次は設備の通信簿——OEEとMTBF/MTTRへ。