予算制約線 — 所得は線を平行に、価格は線の傾きを動かします
月のお小遣いが30,000円。ラーメンは1杯750円、映画は1回1,500円だとします。全額ラーメンなら40杯、全額映画なら20回——この2点を結んだ直線の内側だけが、あなたに買える世界です。
財布の限界をグラフにしたこの線が予算制約線。試験は「所得が変わったとき」と「価格が変わったとき」で線の動き方が違うことを突いてきます。
予算制約線の切片と傾きは何で決まり、所得や価格が変わると線はどう動くのでしょうか。
端は「全額つぎ込んだら」、傾きは「交換レート」です
横軸をラーメン(X財)、縦軸を映画(Y財)とすると、横軸の端は「全額ラーメン」の40杯(30,000÷750)、縦軸の端は「全額映画」の20回(30,000÷1,500)。線の傾きの大きさは750/1,500=1/2——映画1回をあきらめればラーメン2杯、という市場の交換レート(価格比)です。
お小遣いが増えれば、両方の端が同じ倍率で伸びるので線は右上へ平行移動。ラーメンだけ値上がりすれば、縦軸の端はそのままで横軸の端だけが縮み、傾きが急になります。「所得は平行・価格は傾き」——これがこのユニットの背骨です。
式で書けば Px·x+Py·y=I——切片と傾きを読み取ります
予算制約線は Px·x+Py·y=I(使い切りの場合)。y について解くと y=I/Py−(Px/Py)x となり、縦軸切片=I/Py・傾き=−Px/Py と読めます。傾きの大きさが価格比=X財1単位の機会費用です。
動き方を場合分けすると——①所得Iの増加:両切片が同率で伸びる=右上へ平行シフト。②Pxの上昇:横軸切片I/Pxだけが原点寄りに縮む=傾きが急に。③Pyの上昇:縦軸切片I/Pyだけが縮む=傾きがゆるく。どの場合も「どの切片が動くか」から復元できます。
「値上がりで平行シフト」——所得と価格の効き方を混ぜる肢が定番です
定番の誤り肢は「X財の価格上昇により、予算制約線は左下に平行移動する」——誤り。平行移動するのは所得が変わったときで、価格の変化は傾きを変えます(動くのは値上がりした財の側の切片だけ)。
逆パターン「所得の減少により傾きが急になる」も誤り——所得は価格比に影響しないので、傾きは変わりません。平行か、回転か。原因が所得か価格かで図の動きを即断できるようにしておきます。
「原材料が値上がりしたので、うちも値上げしたい」という相談は、顧客の予算制約線を動かす話です。値上げは顧客から見れば傾きの変化——おたくの商品だけが相対的に高くなり、代わりの選択肢へ乗り換える動機が生まれます。一律値上げか、セット価格で実質の交換レートを守るか——線のどこを動かすかという発想が、価格改定の設計に効きます。
冒頭の問いに答えます。予算制約線 Px·x+Py·y=I の切片は「全額つぎ込んだ量」(I/Px・I/Py)、傾きは価格比 Px/Py で、所得の変化は平行シフト・価格の変化は傾きの変化として現れます。この線と前ユニットの無差別曲線を重ねると——最適消費の接点が決まります。