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経済学・経済政策 / 消費者の理論消費
消費者の理論 4/4 / 約5分

所得効果と代替効果 — 値上がりで需要が増える財の正体を分解します

カップ麺(100円)が主食で、たまのぜいたくにステーキ(2,000円)を食べる生活を想像してください。カップ麺が150円に値上がりしたら——ステーキを食べる余裕がさらに消え、その分をカップ麺で埋める。値上がりしたのに、カップ麺の消費が増えるのです。

「値上がりすれば需要は減る」の例外がなぜ起きるのか。価格変化の効果を2つに分解すると、からくりが見えます。

この5分の問い

財が値上がりしたとき、需要が減るとは限らないのはなぜでしょうか。

直感でつかむ

値上がりの効果は「割高になった」と「貧しくなった」の2つです

値上がりは2つの顔を持ちます。第一に、他の財より相対的に割高になった——だから他の財に乗り換える(代替効果。消費を減らす方向で、必ず働く)。第二に、同じお金で買える量が減り実質的に貧しくなった——この「貧しくなった」ことの影響が所得効果です。

所得効果の向きは財によって違います。普通の財なら貧しくなれば消費を減らす。しかし貧しくなるとむしろ消費が増える財(劣等財——カップ麺のような「余裕がないときの選択肢」)では、所得効果が消費を増やす方向に働きます。この増加分が代替効果の減少分を上回ると——値上がりで需要が増えるギッフェン財の完成です。

分解の合言葉代替効果は必ずマイナス/所得効果は通常財マイナス・劣等財プラス——ギッフェン財=劣等財かつ所得効果>代替効果
厳密に見る

3つの財を符号の表で仕分けます(スルツキー分解)

価格変化の効果を、相対価格の変化だけによる部分(代替効果)と、実質的な購買力の変化による部分(所得効果)に分けるのがスルツキー分解です(補償の取り方で呼び名が分かれ、購買力を一定に保つのがスルツキー、効用を一定に保つのがヒックスの分解です)。代替効果は常に消費を減らす方向(−)。所得効果は通常財で−・劣等財で+

合計の符号で3つに仕分けます——通常財:−と−で全体−(需要曲線は右下がり)。劣等財(非ギッフェン):−と+(小)で全体は−のまま。ギッフェン財:−と+(大)で全体が——需要曲線が右上がりになる唯一のケースです。つまりギッフェン財であるための条件は劣等財であること+所得効果が代替効果を上回ることの2段構えです。

結論が反転する分かれ目
劣等財(非ギッフェン)
所得効果+(小)<代替効果−
合計はマイナスのまま——需要曲線は右下がりを保つ
ギッフェン財
所得効果+(大)>代替効果−
合計がプラスに反転——需要曲線が右上がりになる唯一のケース
分かれ目 ギッフェン財は劣等財の一種。「独立の概念」とする肢と「劣等財はすべてギッフェン」とする肢の両方が誤りです。
ここで間違える

「ギッフェン財は劣等財とは別の概念」が最頻出の誤り肢です

最頻出はギッフェン財と劣等財の関係を切り離す肢——「ギッフェン財は劣等財とは独立の概念である」は誤り。ギッフェン財は劣等財の一種(劣等財のうち所得効果が代替効果を上回る希少ケース)です。「劣等財はすべてギッフェン財」も逆向きの誤り。

もう1つは代替効果の符号。「劣等財では代替効果が正になる」——誤り。代替効果は財の種類にかかわらず必ず負です。符号が財によって変わるのは所得効果の側、と固定してください。

実務では

「値上げしたら客が減るか」という相談に、この分解は解像度を与えます。看板商品が「他で代わりの利かない存在」なら代替効果は小さく、値上げしても客数は粘る。逆に競合で代替が利くなら、値上げは乗り換えを直撃します。値上げ耐性の見立ては、代替効果の大きさの見立て——診断の現場ではこの言葉に落として説明できます。

確かめる — 予想してから答え合わせ
この5分のまとめ

冒頭の問いに答えます。値上がりの効果は、必ず消費を減らす代替効果と、財の性質で向きが変わる所得効果に分解でき、劣等財かつ所得効果が代替効果を上回るとき——ギッフェン財——だけ需要が増えます。これで消費者理論は一巡。経済学の最後のピース、経済成長のソロー・モデルへ進みます。