市場の失敗 — 隣のBBQの煙と、入場料の取れない花火大会
隣の家がBBQを始めると、おいしい匂いと一緒に煙が来て、干していた洗濯物が煙臭くなります。焼いている本人は自分の楽しみだけを勘定して、あなたの被害は勘定に入れていません。
価格に映らないコストや便益があると、市場は「作りすぎ」や「作らなさすぎ」を起こします——市場の失敗の代表2型、外部性と公共財です。
外部性があると市場均衡はどちらにずれ、公共財はなぜ市場では供給されないのでしょうか。
迷惑は作りすぎ、恩恵は作らなさすぎになります
外部不経済(負の外部性):工場の排煙のように、他人へのコストが価格に映らない場合。作り手は本当の社会的費用より安いつもりで作るので、社会最適より作りすぎ、死荷重が出ます。外部経済(正の外部性):教育や、果樹園の隣の養蜂のように、他人への恩恵が価格に映らない場合。作らなさすぎになります。
公共財は花火大会です。お金を払わない人を締め出せず(非排除性)、誰かが見ても他の人の分が減らない(非競合性)。すると誰もが「他の人が払うだろう」とフリーライダーになり、市場では誰も供給しない——だから政府が税で供給します。
是正の道具箱——ピグー税とコースの定理を区別します
外部性の是正(内部化)の道具は主に2系統です。ピグー税・補助金:迷惑には「煙1単位あたりいくら」の税を課して私的費用を社会的費用まで引き上げ、恩恵には補助金で後押しし、どちらも社会最適の量へ導きます。コースの定理:権利(煙を出す権利か、出させない権利か)を明確にして交渉を自由にすれば、交渉コストがゼロなら当事者間の取引で効率的な結果に到達する——政府の介入なしで解決しうる、という定理です。ただし現実には交渉コストがあるため、適用条件の理解ごと問われます。
公共財の判定は2条件のマトリクスで出ます。非競合性と非排除性の両方を満たすのが純粋公共財(国防・花火)。混雑する一般道路のように片方が崩れる財は準公共財として分類されます。
「外部経済も生産過剰を招く」——向きの貼り替えが定番です
過剰と過少の貼り替えが最頻出です。不経済(迷惑)=過剰、経済(恩恵)=過少。BBQの煙(作りすぎ)と教育(放っておくと足りない)の対で固定してください。
コースの定理側は「交渉コストの存在下でも常に効率的な解決に至る」とする肢が罠——取引費用ゼロが前提条件です。公共財側は「非競合性」と「非排除性」の定義の入れ替え(締め出せない=非排除、減らない=非競合)に注意します。
「商店街のアーケード、うちだけ負担金を払う意味ある?」。アーケードは典型的な地域の公共財で、フリーライダー問題そのものです。全員が「他の店が払うだろう」と考えれば維持できない——負担金制度や商店街組合という仕組みは、フリーライダーを防ぐ制度設計だと説明できると、会費の議論が感情論から構造の話に変わります。
冒頭の問いに答えます。外部不経済は過剰・外部経済は過少を生み(是正はピグー税/補助金、交渉コストゼロならコースの定理)、非排除性×非競合性の公共財はフリーライダーが集まって市場では供給されません。最後のユニットは情報の偏りが起こす失敗——中古車市場と保険の話、逆選択とモラルハザードです。