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経済学・経済政策 / 市場と価格の理論市場
市場と価格の理論 5/5 / 約5分

情報の非対称性 — 契約の前の隠しごとか、契約の後の気の緩みか

中古車屋に、見た目そっくりの車が同じ値段で並んでいます。良い車かボロい車か、買い手には分かりません。すると買い手は「ハズレかもしれない」と安値しか払わず、良い車の持ち主は「その値段では売らない」と市場を去る——良い車から順に消えていきます

情報の偏りが市場を壊すこの現象には、「いつ偏っているか」で2つの名前があります。

この5分の問い

逆選択とモラルハザードは何がどう違い、それぞれどんな対策があるのでしょうか。

直感でつかむ

取引の「前」の偏りが逆選択、「後」の偏りがモラルハザードです

逆選択取引前に相手の質が見えない(隠れた情報)。中古車のレモン市場では良い車が駆逐され、保険では健康に不安のある人ほど加入したがる——放っておくと悪い方だけが残ります。

モラルハザード取引後に相手の行動が見えない(隠れた行動)。保険に入った途端、運転が雑になる——契約が行動を変えるのに、保険会社は24時間監視できません。前か後か、情報か行動か——この軸で2つは切り分けられます。

非対称性の合言葉取引×隠れた情報=逆選択/取引×隠れた行動=モラルハザード
厳密に見る

対策は「見せる・見抜く・見張る・報酬設計」で対応づけます

逆選択への対策:情報を持つ側が自ら質を証明するシグナリング(中古車の保証書・資格・学歴)、持たざる側が仕分けるスクリーニング(免責額の異なる保険メニューで自己選別させる)、そして強制加入(健康な人も含めて全員入れて、悪い方だけ残る構造を断つ)。

モラルハザードへの対策監視・モニタリングと、行動の結果に報酬を連動させるインセンティブ設計(成果連動型報酬・保険の免責額)。依頼人と代理人の利害不一致という一般形はエージェンシー問題(プリンシパル=エージェント関係)と呼ばれ、経営理論でも再登場します。

結論が反転する分かれ目
逆選択
取引前×隠れた情報
レモン市場・保険の加入選別。対策=シグナリング・スクリーニング・強制加入
モラルハザード
取引後×隠れた行動
加入後の気の緩み。対策=監視・成果連動のインセンティブ設計
分かれ目 事例文の時系列(契約の前か後か)に丸を付けてから判定——貼り替え肢はそこで切れます。
ここで間違える

事例文の「前か後か」を読み違えさせる出題が定番です

典型の出題は事例マッチングです。「保険加入後に予防を怠る」=の行動→モラルハザード。「事故歴の多い人ほど手厚い保険を選ぶ」=の質の偏り→逆選択。時系列に丸を付けてから判定します。

対策の貼り替えにも注意——シグナリングは情報を持つ側の行動(売り手が保証を付ける)、スクリーニングは持たざる側の仕掛け(買い手・保険会社がメニューで選別)。主語の向きを入れ替える肢が並びます。

実務では

「いい人材が来ないし、採っても頑張ってくれない」。採用は逆選択(面接前に質が見えない→資格・実績・リファレンスというシグナル/スクリーニングで対処)、入社後はモラルハザード(行動が見えない→評価制度とインセンティブ設計で対処)。人事の悩みを「前の問題か、後の問題か」で切り分けるだけで、打ち手の議論が噛み合い始めます。

確かめる — 予想してから答え合わせ
この5分のまとめ

冒頭の問いに答えます。取引前の隠れた情報が逆選択(対策=シグナリング・スクリーニング・強制加入)、取引後の隠れた行動がモラルハザード(対策=監視・インセンティブ設計)。これで市場と価格の理論5ユニットが完結——生産者の費用から市場の失敗まで、ミクロの背骨が通りました。