ゲーム理論 — 「お互い様の膠着」を利得表から見つけます
友達とテスト勉強のノートを見せ合う約束をしたとします。2人とも見せ合えば互いに得。ところが「相手が見せてくれるなら、自分はズルして見るだけの方がもっと得」——そして相手も同じことを考えます。行き着く先は、2人ともズルして誰も得しない結末です。
約束が壊れるこの構造を、表1枚で分析するのがゲーム理論です。
ナッシュ均衡とは何で、利得表からどうやって見つけ、なぜ「全員損」の均衡が生まれるのでしょうか。
「相手が動かない限り、自分も動きたくない」状態が均衡です
ナッシュ均衡=相手の戦略を所与として、全員が自分にとっての最適な手を打ち合っている状態。誰も一方的に戦略を変える動機を持たない——お互い様の膠着です。相手の出方にかかわらず常に最善の手があるなら、それは支配戦略と呼ばれます。
大事な注意はこれです——ナッシュ均衡は「全体にとって最良」とは限りません。冒頭のノート問題では、(ズル、ズル)が均衡なのに、(見せ合う、見せ合う)の方が2人とも幸せ。個人の合理性が全体の最適を壊す構造を囚人のジレンマと呼びます。
利得表で最適反応に印を付け、両方に印が付くマスを探します
利得表(A協調/B協調=3,3・A協調/B裏切り=0,5・A裏切り/B協調=5,0・A裏切り/B裏切り=1,1)で手順を型化します。①Bが協調のとき、Aは協調3か裏切り5——裏切りが最適。②Bが裏切りのとき、Aは協調0か裏切り1——裏切りが最適。つまりAには「常に裏切り」の支配戦略があります。③Bも対称なので同じ。④両者の最適反応が重なる(裏切り、裏切り)=(1,1)がナッシュ均衡です。
一方、(協調、協調)=(3,3)は両者が(1,1)より幸せなパレート改善の到達点——均衡がここに到達できないズレこそが、この理論の一番の教訓です(カルテルが崩れる理由・価格競争が止まらない理由の説明原理)。
「ナッシュ均衡=最も望ましい状態」と読ませる肢が定番です
均衡(安定して実現しやすい)と最適(望ましい)を混同させる肢が最頻出です。囚人のジレンマではナッシュ均衡(1,1)とパレート最適(3,3)が一致しません——「ナッシュ均衡は常にパレート最適である」は誤りです。
探し方の雑さも狙われます。「利得の合計が最大のマスが均衡」——誤り。均衡は合計ではなく、各プレイヤーの最適反応の重なりで決まります。行と列で1回ずつ、印を付ける手順を省かないこと。
「近所の店が値下げしたから、うちも下げるしかない」。値下げ合戦は囚人のジレンマの実物です。両店とも下げなければ利益は守れたのに、「相手が下げたら自分だけ高値では負ける」の読み合いで(値下げ、値下げ)へ膠着する——構造を言語化できれば、「価格以外の差別化で土俵を変える」という助言の必然性まで語れます。
冒頭の問いに答えます。ナッシュ均衡は「相手が動かない限り自分も動かない」お互い様の膠着で、利得表の各行・各列に最適反応の印を付けて重なるマスを探します。そして均衡は全体最適とは限らない——これが囚人のジレンマの教訓です。次のユニットは国境を越えるお金の話——円高・円安とJカーブです。