ドメイン — 「何屋か」の名乗り方が、会社の未来を決めます
鉄道会社が自分を「鉄道屋」と名乗るか、「移動サービス屋」と名乗るか。前者なら線路の上だけが商売の場所ですが、後者ならバスもタクシーも視野に入ります。
「うちは何屋か」の決め方——事業ドメインの定義——は、ただの自己紹介ではなく、これから何に手を出せるかの設計図です。試験は「3次元」の正確な暗記と、製品軸のひっかけで突いてきます。
事業ドメインは何によって定義すべきで、製品で定義すると何がまずいのでしょうか。
製品でなく「誰の・何を・どうやって」で名乗ります
エーベルのドメイン定義は3次元です。顧客層(誰に)・顧客機能(どんな用事を足すか)・技術(どうやって)。この3つの軸で事業の領域を切り取ります。
やってはいけないのが製品による定義です。「うちは鉄道屋」と製品で名乗ると、自動車の時代が来たとき土俵ごと沈みます——この近視眼をレビットはマーケティング・マイオピアと呼びました。「移動という顧客機能」で名乗っていれば、乗り物が変わっても商売は続きます。
広すぎず狭すぎず——合意と硬直性まで押さえます
ドメインには塩梅があります。狭すぎれば成長の芽を自分で摘み、広すぎれば資源が散って何屋か分からなくなる。定義したドメインが組織の内外で共有・合意されている状態——組織のメンバーだけでなく、顧客や取引先といった利害関係者も「あの会社は何屋か」を了解している状態——をドメイン・コンセンサスと呼び、戦略実行の前提になります。
もう1つの試験ポイントがドメインの硬直性——過去に成功したドメインへの執着が、環境変化への対応を遅らせる現象です。「何屋か」は一度決めたら終わりではなく、環境に合わせて再定義するもの——ここまでがドメイン論のセットです。
「ドメインは製品によって定義される」——マイオピアそのものの肢が並びます
最頻出の誤り肢は、レビットが批判した当のもの——製品軸でのドメイン定義を正しいと言わせる文です。「自社の主力製品を軸にドメインを定義することが望ましい」——誤り。顧客機能(用事)を軸に置くのが定石です。
3次元の要素の入れ替えにも注意——「顧客層・製品・価格の3次元」のような偽3次元が並びます。顧客層・顧客機能・技術の3点セットを崩さないこと。
「うちは印刷屋だから、紙が減ったらおしまいだよ」。この諦めこそドメイン再定義の出番です。印刷という製品ではなく「販促物で集客を助ける」という顧客機能で名乗り直せば、Webやサイネージへの展開が戦略の続きとして見えてくる——「何屋か」を問い直すのは、診断の最初の一手にして最大の一手です。
冒頭の問いに答えます。ドメインはエーベルの3次元(顧客層×顧客機能×技術)で定義し、製品で名乗ると近視眼(マイオピア)に陥ります。「何屋か」が決まったら、次は「どちらへ育てるか」——アンゾフの成長マトリクスです。